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2012年6月 9日 (土)

急に売れ始めるにはワケがある/マルコム・グラッドウェル

Photo ジンバルドは実験の結果に衝撃を受けた。看守たちが・・・・・・それまでは平和主義者だと自任している者も何人かいたのに・・・・・・たちまち厳しいしごき屋に変貌したのだ。最初の夜から囚人たちを午前二時に起こして腕立て伏せを命じ、壁に向かって整列させ、その他気まぐれな命令を出した。二日目の朝、囚人たちは反抗した。識別番号をはがし、房内に立て籠もった。看守たちは囚人を裸にしたあげく、消火器を噴射してそれに対抗し、反乱の首謀者を隔離房に閉じ込めた。
 「ときどきひどく口汚く、面と向かって怒鳴りつけることもありました」と、ある看守役は回想している。「それも全体の恐ろしい雰囲気の一部でした」実験が進むにつれて、看守たちはますます徹底して残酷になっていった。
 「変化の激しさと速さはとても予測のつくようなものではありませんでした」とジンバルドは言う。
 看守たちは、囚人に自分たちは愛し合っていると互いに言わせ、手錠をかけ、頭から紙袋をかぶせて廊下を行進させたりもした。
 「今のわたしの行動とは正反対でした」と別の看守役は言う。「自分の心の残虐性という点では、まったく常軌を逸していたと思います」
 三六時間後、一人の囚人がヒステリー状態になり、解放しなければならなくなった。さらに四人の囚人が「泣いたり興奮したり、極端な情緒不安定と不安神経症」の徴候を示したので、やはり解放された。
 ジンバルドの心づもりでは、実験は二週間の予定だった。が、六日で切り上げた。

1970年代の初め、フィリップ・ジンバルドを中心とするスタンフォード大学の社会科学者のグループはある実験を行う。

ジンバルドは、大学の心理学部ビルの地下に模擬監獄を作る。

準備が整うと、地元の新聞で実験に参加してくれるボランティアを募る。

75人の応募者のなかから、ジンバルドは、この心理学テストに耐えられる心身ともに健全そうな21人を選び出す。

さらにそのなかから任意に半数を選んで看守役とし、制服とサングラスを与えて、監獄の秩序を守ることが任務だと伝える。

残る半分は囚人役に割り当てられた。

実験の目的は、監獄はどうしてあんなに不快な場所なのか、その理由をつきとめることにあった。

ところが、思いがけないことが起こる。

実験が進むにつれて、看守たちはますます徹底して残酷になっていき、やがて、実験を続けることが不可能な状態にまでなってしまう。

この実験から得たジンバルドの結論は、わたしたちに元から備わっている素質を圧倒してしまうほど強力な特殊状況があるということ。

正常な人間を良い学校と恵まれた家庭と良い住環境から引き離し、目前にある状況の細部を変えただけで彼らの行動を強力に支配してしまうような瞬間がある、ということだ。

このように、すべてが一気に変化する劇的な瞬間を、本書ではティッピング・ポイントと呼んでいる。

本書で取り上げられた事例は多岐にわたっている。

子供番組「セサミ・ストリート」、ニューヨークの犯罪、独立戦争、あるいは商品がどのようにして売れていくかなど、

一見関連がなさそうな事象について、そこから具体的なメカニズムを解明している。

ティッピング・ポイントとは小さなことなのである。

そして、小さなことが、やがて大きな動きを起こす。

このことを知ることは重要だ。

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