戦略プロフェッショナル/三枝匡
良い戦略は極めて単純明快である。逆に、時間をかけ複雑な説明をしないと理解してもらえない戦略は、だいたい悪い戦略である。悪いという意味は、やっても効果が出ないという意味である。
良い戦略は、お父さんが家に帰って、夕食を食べながら子供に説明しても分かってもらえるくらい、シンプルである。悪い戦略は、歴戦のビジネスマンに一日かけた説明会を開いても、まだもやもやしている。
企業の経営改善には「戦略」が必要だ。
そして、それを実行に移すための具体的「プログラム」が必要だ。
社内の誰もが理解できる「単純な目標」と、その実現を支援してやるための一連の「プログラム」を打ち出すことによって、「目標と現実のギャップ」に橋がかかる。
そうした手法を根気よく繰り返していかない限り、長丁場の経営改善は進まない。
それを支えるためには、組織のなかに「戦略意識」が醸成され、社員が「共通の言語」を喋るようにならなくてはいけない。
大事なことはその「共通の言語」は誰もが理解でき、覚えられる、単純明快な言語でなければならないということ。
例えば、営業マンが何かを売りに行く時にも、同じ現象が見える。
彼らが良い製品を売り込む時の説明は単純明快である。
逆に、時間をかけ複雑な説明をしないと理解してもらえない製品は、だいたい悪い製品である。
ここで言う悪いという意味は、なかなか売れないという意味。
悪い製品であればあるほど、その業界の製品の説明は複雑になっていく。
わずかな差を説明しようとするからである。
これは企業の戦略も共通して言えること。
このことは以前読んだ「ストーリーとしての競争戦略」にも同様のことが書かれていた。
この本の中で著者、楠木氏は「戦略の神髄は 思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある」と言っている。
大きな成功を収め、その成功を持続している企業は、戦略が流れと動きを持った「ストーリー」として組み立てられているという点で共通している、という。
戦略とは、必要に迫られて、難しい顔をしながら仕方なくつらされるものではなく、誰かに話したくてたまらなくなるような、面白い「お話」をつくるということ、だと。
これは経営戦略の本質なのかもしれない。
このことから考えると、今の多く企業の戦略はあまりにも複雑すぎる。
うまくいかないはずである。
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