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2012年6月 7日 (木)

刑事と民事/元栄太一郎

Photo 先ほど、弁護士が奪い合うパイは限られていると述べたが、競争が激しくなれば、当然そのパイを増やそうとする動きも出てくるだろう。仕事を得るために、いままでなら裁判沙汰にならなかったような問題でも、積極的に取り扱おうとする弁護士が増えるに違いない。弁護士が増えれば増えるほど、法的な争いごとに関わる一般人も増える可能性が高いということだ。
 たとえば米国には、80万人から90万人もの弁護士がいるといわれている。総人口は日本の2倍程度なのに、弁護士は30倍から40倍ぐらい存在しているわけだ。あの国が「訴訟社会」と呼ばれるのは、この弁護士人口の多さと無縁ではない。それだけの人数の弁護士が食べていくためには、膨大な件数の訴訟が必要なのである。
 そして、弁護士を必要とする案件は向こうからはやって来ない。日本の弁護士は事務所で依頼人からの連絡を待っていることがまだ一般的だが、米国の弁護士は違う。自ら案件を探し歩かなければ、競争に勝つことができない。
 その典型が、「アンビュランス・チェイサー(救急車の追跡者)」と呼ばれる弁護士だ。
交通事故や爆発事故などが起きると、まるで救急車を追いかけてきたかのようなタイミングで被害者の搬送された病院に現れ、損害賠償請求訴訟の代理人になるべく、その場で本人や家族から委任状を取り付けるのである。
日本の弁護士も、いずれ依頼人を待っているだけでは商売が成り立たない状況になるだろう 自らトラブルや争いごとを見つけ出して、必要に応じて当事者に訴訟を起こすよう勧めたりするわけだ。
 たとえば離婚など、いまはまだ当事者同士の話し合いで決着がつくケースのほうが多いが、そのうち双方に必ず弁護士がつく時代になるだろう。一方が「タダで別れるなんてもったいないですよ」と弁護士にアドバイスされ、高額の慰謝料を請求すれば、相手も弁護士を立てて応戦せざるを得ない。

新司法試験となり毎年2000~3000名の合格者が出ている。

合格者のうち検察官と裁判官になる者は毎年200名程度にすぎない。

残りは弁護士になる。

とすると、合格者が3000人だとすれば毎年2800人前後の新人弁護士が誕生することになる。

つまり、これから10年も経たないうちに弁護士人口が二倍になると予想される。

弁護士が増えるのとは逆に、これから日本の総人口は減っていく。

ということは、限られたパイを、急増する弁護士たちが奪い合うようになるわけだ。

ひところの過払い金バブルもそろそろ収束を迎えようとしている。

そうすると、もしかしたら、法律事務所の大倒産時代が訪れるかもしれない。

業界再編のようなことが起こるかもしれない。

背に腹はかえられなくなって、暴力団や企業などの組織的な脱法行為に加担して「悪の商品開発」に手を染める弁護士も増えるかもしれない。

何のための司法制度改革だったのかと考えてしまう。

少なくとも、アメリカのような訴訟社会はごめんだ。

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