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2012年7月15日 (日)

憲法が教えてくれたこと/伊藤真

4e27f17215d5253164f59659335c7e76 包みを開けると、中に入っていたのは真っさらなランニングシューズと一冊の本だ。うたこはいぶかしげな表情で本の題字を読み上げた。
「日本国憲法……?」
 早速、祖父の拓馬にメールを打ってみた。離れて暮らしているけれど、拓馬とは中学の頃からのメル友でもあるのだ。
「おじいちゃん、欲しかったランニングシューズ、ありがとう! でも、この本はどういう意味なの?」
 拓馬からの返事は首をかしげるばかりのものだった。
「その本は、いってみればダイコンにとっての畑、つまり日本国民にとっては大地みたいなもの。だから、もしもうたこの大地が揺らぎそうになったときとか、もっともっと自分らしく自由に楽しく生きたいと思ったときのお守りにしてくれればいいよ。きっと、うたこのためになると思う。まあともかく、陸上も高校生活もうたこらしく楽しくがんばって」

本書は、弁護士である著者が、日本国憲法のイロハについて、物語形式で語っている。

物語の設定としては「もしドラ」と良く似ている。

「もしドラ」は、主人公である女子高生が、高校野球のマネージャーの仕事を、間違って購入したドラッカーのマネジメントを読みながら考え、壁を乗り越えていくという設定だが、

本書も、主人公である女子高生が、入学祝いに祖父からもらった本「日本国憲法」を通して、所属する陸上部の部活で起こる様々な問題に向き合っていく、といった内容。

日本国憲法というと、何かとっつきにくく、私達の日常にはあまり関係ないことが書かれていると思いがちだが、実は、表現の自由や、個性の尊重といった日本人が生きることの根幹をうたっている。

著者が特に強調しているのは、憲法の真髄は、「個人の尊重、個人の尊厳」だということ。

「みんなと同じじゃなくちゃいけない」ではなく、「人と違っていいんだよ」「人と違うことはすばらしいことなんだよ」「もっと自分に自信をもって自分らしく堂々と生きていいんだよ」と、憲法はあらゆるところで一貫してそれを言っている、ということ。

それは、姿形もそうかもしれないし、ものの考え方もそうかもしれない。

誰を好きになるかということも、もちろんそう。

容姿、性格、勉強ができるできない、スポーツができるできない、ありとあらゆる面で、それはすべてあなたの個性であって、それはそのまま丸ごとすばらしいことなんだよ、と憲法は言っているのだと。

その意味で本書は、憲法というものを、身近なものとして受け止めるという意味では、一定の役割を果たしていると思う。

ただ、個人的には、憲法は国民の権利についてはしっかりとうたっているのだが、それと比較して国民の「義務」についての記述があまりにも少ないのではと感じている。

権利を主張し、自分らしさを求めるのも大事だが、同時に国民としての義務を果たすことも同じくらい大事だと思うのだが、どうだろうか。

とにもかくにも、憲法というと何かと「第九条」が話題になるが、それも含めて、もっと憲法というものに関心を持つべきだ、ということは確かなことだと思う。

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