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2012年7月 7日 (土)

エースの資格/江夏豊

4569800483 落合とは一九八一年、ロッテと日本ハムでプレーオフを戦ったあと偶然に会って、「麻雀をしたい」と言うので連れていったんです。
 あのとき、落合がリーチをかけてきて、その待ちを私が指摘すると、「なんで江夏さん、わかるの?」って聞いてきた。私は「そんなもん、野球とおんなじで、おまえの読みなんてすぐわかるわい」と答えた。「野球でもじっと待たれるほうがピッチャーは怖いんだぞ」って続けたんですが、すると次の年、前に話したとおり、それまではなんでも一球一球、追いかけていた落合が、図々しく待つバッターに変わって三冠王を獲ったわけです。
 たぶん落合は、私の何気ないひと言を参考にしたと思うんですよ。もうシーズンオフでしたから、麻雀をしても自然に野球の話が出てきたし、彼にとっては「運命の麻雀」だったかもわかりません。

阪神時代はエース、移籍後はストッパーとして活躍した江夏が、いまのプロ野球を論じている。

江夏の言っている、「エースとはこうあるべき」とかいう主張は、野球については全くの素人である私にはどうでもいいこと。

だが、だだ一つ、落合とのエピソードは非常に面白く感じた。

それまでの落合選手は、なんでも追いかけるバッターだった。

江夏が日本ハムに移って初対戦のとき、落合は一球一球、追いかけてきた。

だから江夏にとっては楽な相手だった。

ところが翌年、図々しく待つスタイルに変わっていたという。

じーっと待って、ねらい球を絞ってフルスイングしてくる。

ピッチャーにとっての絶対的な鉄則である「フルスイングさせてはいけない」を完全に破られた。

落合が自身初の三冠王を獲ったのは、まさにその八二年。

その後、二度も三冠王に輝いている。

そういう意味では、追いかけるバッターから図々しく待つバッターに変わって、落合は超一流選手になったといえる。

そして、そのきっかけになったのが、麻雀のときになにげなく発した江夏の一言だったということ。

超一流になる選手と、並の選手で終わってしまう者との差はこんなところにあるのかもしれない。

つまり、普通の人であれば何気なく流してしまう言葉を、超一流になる人は見逃さず、自分のものにしてしまうということ。

これは何も野球選手に限らず、ビジネスの世界にも同じことが言えるのではないだろうか。

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