まずは1社3年働いてみなさい!/樋口弘和
そもそも企業はどういう人材に価値を見出すのかという話を、先にしておこう。
「それはやっぱり、営業がうまくて、売上がダントツな人だろう?」
「業務をバリバリこなせる、事務スキルの高い人でしょう?」
どちらも間違い。
少々専門的な言葉になるが、企業が求めるのは、自社の組織力を向上させる社員だ。
組織力を向上させる社員とは、かみ砕いて言えば、仕事を「やりたい」「やりたくない」という価値観で考える以前に、
「自分でできる仕事は何か」
「今やるべき仕事は何か」
という基準で判断する、バランスの良い考え方ができる人をさす。
だから、いくら売上が多くスキルが高くても、こうした発想を持てない人に、企業は社員としての価値を認めない。
今、入社して3年以内に会社を辞めてしまう社員が増えている。
よく言われるのが「離職の七五三」という言葉。
つまり、入社して3年以内に辞める新卒社員の割合が、
中卒は七割、高卒は五割、大卒は三割だということ。
これは買い手市場と言われている現在であっても全く変わらない。
原因の一つは、企業の求める人材像と、新卒社員がイメージとして描いている優秀な社員像が全くずれているということにある。
企業が求めているのは、上記引用文にもあるように、その企業の組織力を向上させる社員である。
ところが、新卒社員が優秀だと思っている社員とはダントツの営業力をもっていたり高いスキルを持っている社員。
とうぜん、そこにはミスマッチがおこる。
特に自分が優秀だと思っている社員ほど、どうしてこの会社はこんなに優秀な自分を評価してくれないのかと、それが離職の原因になったりする。
これは社員も考えを改める必要もあるかもしれないが、企業もそのままでいいのかどうか少し考える必要がある。
というのは、今、日本人だけに限らず、外国人にも同様のミスマッチが起こっているからである。
たとえば高学歴の中国人が新卒で入ってきても、日本の企業は基本的には年功序列なので、それほど高い給料は支給しないし、また、それにあった仕事も与えられない。
彼らには、「3年間はたとえ面白くなくても、我慢して今与えられた仕事をしろ」という言葉は通用しない。
そのため、優秀な外国人ほど、すぐに辞めてしまう。
これが日本式なのだと言えばそれまでなのだが、これから先、どうなのだろう?
本当にこのままでよいのだろうか?
今、多くの企業は新興国に進出しようとしている。
その場合、優秀な外国人を採用できるかどうかは重要な課題となる。
そうなった場合でも、日本式を貫き通せるのだろうか?
根本的にやり方を変えるときがくるのかもしれない。
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