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2012年8月 2日 (木)

創業家物語/有森隆

20062_120211345_s 大正製薬のオーナー・上原正吉は、企業が生き残る道は、同族経営による独裁体制しかないと考えていた。
「同族会社は不都合な会社の代名詞のようにいわれている。しかし私は、頭から悪い会社と決めつけるのはどうかと思う。(中略)同族会社にも長所がある。それは独裁ができやすいということだ。(中略)商売は戦争である。戦争は生命を賭けたものである。どうしても勝たなければならない。勝つためには、即断、即決、即行でなくてはならない」

上記の言葉ほど、世襲・同族企業のメリットを端的に言い表している言葉はないであろう。

今、勝ち組と言われている企業の多くは同族経営による独裁体制を敷いている。

そう考えると、同族経営を単純に「悪」だとは言い切れないような気がする。

同族企業のお家騒動の代表例は、「誰を後継経営者にするか」という問題であろう。

このことが時には骨肉の争いに発展する。

「息子を社長にするのは、いつでもできる。だが、経営者にすることはできない」

ダイエーの創業者、中内功はこんな言葉を遺したという。

けだし名言である。

二代目、三代目への会社継承は、いつの時代でも難しい。

世襲か脱世襲か、創業者は等しく、中内功と同じ悩みを抱えているようだ。

世襲とは、親が持っている地位、財産、職業などを親から子へ、子から孫へと代々受け継ぐこと。

日本では、政治家、外交官、医師、大学教授、芸能人に世襲が広く見られるが、企業社会でも親の七光りによる世襲化がはびこる。

世襲・同族経営のメリットは、常に成果が求められるサラリーマン経営者と異なり、長期的な視野に立って経営ができる点だ。

また、即断、即決、即行が可能なのも同族経営のメリットであろう。

今、サムソンの躍進が著しいが、その強みは何といっても、あれほどの世界的企業であってもその本質は同族経営であるという点であろう。

同族経営であるが故に、スピード感のある意思決定が可能なのであろう。

逆にデメリットは、閉鎖的になりがちな点だ。

社内は、創業家への忠誠を優先させるヒラメ社員ばかりになり社内の空気が澱む。

オーナー社長の周りはイエスマンばかりになってしまう。

これが続くと、やがて社長は裸の王様状態に陥る。

そして社員の積極性と創意工夫を圧殺する経営体質になってしまいがちだ。

世襲・同族経営に失敗した企業は、たいていこのパターンだ。

ただし、忘れてはならないのは、中小企業を中心に、日本の法人の九割近くが世襲・同族経営であるということ。

私が普段接している社長も、ほとんどが同族企業のオーナー社長である。

こうなってくると、同族経営は「良い」「悪い」で語ること自体が意味のないことのように感じる。

むしろ、現状をある程度受け入れて、世襲・同族企業を良い方向に向かわせるにはどうすれば良いのか、という点で考えていく方がよほど現実的であるような気がする。

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