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2012年8月14日 (火)

危機の経営/畑村洋太郎、吉川良三

4062158035 危機感にせよ危機意識にせよ、いずれも危機を前にして生じるものです。しかし、そのときの感じ方の程度はかなり違います。たとえば、景気の悪化などの困難な状況が訪れたときには、誰もが将来に不安を強く感じます。「この状況がいつまで続くのか」とか「どれくらい我慢すればいいのか」と心配しますが、これはあくまでも危機感のレベルです。
 嵐はやがて去りますが、たとえていうなら、それまでひたすら不安を感じながらただただじっと過ごしているのが危機感のレベルです。ところが、やってきたのが大嵐だったりすると、嵐が去ったときに自分が生きているという保証はありません。場合によっては、避難場所を別に探す必要があるかもしれません。そんなふうに身の危険を強く感じているのが危機意識を持っているレベルで、危機を前にしているのは同じでも、精神状態はまったく違います。
 一言でいえば、「自分は生き残れるのかどうか」と突き詰めて考えるのが、危機意識なのです。

サムソンの役員として10年間、その躍進を支えた吉川氏から見た日本企業は、危機感はあっても危機意識は全くないという。

危機感と危機意識とは違う。

不況という嵐が過ぎ去れば業績は再び回復する、と考えるのが危機感。

一方、好不況に関わらず、今のままでは生き残れない、と考えるのが危機意識。

確かに、今の日本企業のもっている問題は、景気が回復すれば解決するという類のものではない。

もっと根本的、構造的な問題である。

一番深刻な問題は「自分たちには技術がある」という思い込みと奢り。

それは過剰品質につながり、市場の声を聞く耳をふさぎ、変化することを妨げる。

サムソンもかつては今の日本と同じような危機にあった。

実際、世界の市場でサムスンが大きな飛躍を見せ始めるのは、1997年のアジア通貨危機以降のこと。

それまでもサムソンでは戦略の見直しや、あるいはインフラの整備といったものは、かなり早い段階から行われていた。

しかし、それが機能するには、グループ内における危機意識の高まりという意識改革の徹底が必要だった。

それがアジア通貨危機だった。

当時、韓国の通貨の価値やGDPが大きく下がる中でグループが縮小され、大掛かりな人員整理が行われた。

残った社員も大幅な賃金カットを経験し、さすがに「これから先もサムスンはずっと安泰である」とは誰も思えなくなった。

こうして彼らは本物の危機意識を持つようになった。

これを機に改革が一気に進んだ。

では、今の日本企業にはそのような危機意識があるのだろうか。

危機に瀕しているはずの日本の多くの企業は現在、世の中の変化に対処することなく、自社の技術力を信じながら景気が回復するのをひたすら待っているように見える。

そもそも日本の多くの企業が「自分たちは技術力がある」と思い込んでいること自体が、一種の傲慢なのではないだろうか。

どう考えても危機意識は伝わってこない、というのが実感である。

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