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2012年8月18日 (土)

現場刑事の掟/小川泰平

41kpxssm24l__sl500_aa300_ わたしは約30年間、現場の捜査に携わり、多くの刑事が捜査をする姿を見てきた。その経験からひとつだけ言えることは、捜査とは感性以外の何物でもないということだ。もちろん、自分が培ってきた経験や、先輩から教わる捜査のイロハ、セオリーなどはもちろん重要だが、本当のところは、捜査はそれだけではうまくいかないのである。こう言ってしまえば身も蓋もないが、刑事としての先天的な才能のようなものも必要なのだ。たとえば、運がないと、うまく捜査を進めることは難しい。ものすごく運のない刑事というのも、悲しいかな、けっこういるものである。(中略)
 事件というものは、被害者や犯罪者を中心として現在進行形で変化する「生もの」であり、決して教科書通りには進まないものなのだ。その点、感性の悪い刑事は流れが悪いと言えるだろう。それは初めから、その事件の捜査が進むべきルートを、自分の頭の中で決めてしまっているからだ。
 言い換えれば、柔軟性がないということになる。そういった刑事は、「普通、こういう事件はこうだな」というように、自分の経験や先輩の話などから頭ごなしに決め付けてしまう。結果、犯人がちょっと違うことをすると、計画が狂ったことで狼狽し、逮捕できなくなってしまう。

本書の著者、小川氏は主に盗犯捜査が担当だったという。

盗犯捜査と殺人捜査には大きな違いがある。

殺人は常習者はそれほどいない。

ところが、窃盗は常習者がほとんどであり、再犯率は100%だという。

つまり盗難事件がおこった場合、その犯人はほとんどの場合、犯罪歴のある人だということ。

捜査もリストアップされた犯罪者リストの中から絞り込むような形。

当然、定型化された捜査の定石があり、科学的な捜査も行われるのだが、それであっても最後は感性の問題だという。

これなど、刑事ドラマなどで対立の構図としてよく利用される題材だ。

科学的な捜査を身上とする刑事と、そんなものは一切信用せず、長年のカンと経験で犯人を追い詰めていく刑事が登場し、対立しながら犯人をつかまえるといったストーリーだ。

実際には両方が必要なのだろうが、最後は感性がモノをいうというのは、現場の刑事の本音の部分なのだろう。

そして、最後は感性がモノをいうというのは、全ての仕事に共通することでもある。

仕事のできる人は、その人独自のマニュアル化できないような独特の感性をもっているものだ。

問題は、その感性の部分をどうやって後に続く者に継承していくのか、ということ。

マニュアル化できない部分であるだけに難しい。

多くの企業がこの問題に直面している。

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コメント

拙著をお読みいただきありがとうございます。
素晴らしい書評を頂きましたことに感謝しております。
今後ともよろしくお願いいたします。
                        小川泰平

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