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2012年8月22日 (水)

フレーム/チェ・インチョル

8181_l アメリカのコーネル大学心理学科の研究チームは、1992年夏季オリンピックを中継したNBCの放送資料から、メダリストたちが競技終了の瞬間にどのような表情をしていたかを観察し、その感情を分析する研究を行なった。
 研究チームは、23名の銀メダリストと18名の銅メダリストの表情の観察を実験の参加者に依頼した。まず競技の結果が決定した瞬間に彼らの感情が「悲痛」に近いか「歓喜」に近いかを参加者に10点満点で評定してもらった。さらに、競技後の授賞式で銀メダリスト20名と銅メダリス15名の選手たちが見せた感情についても同じ方法で評定してもらった。
 分析の結果、競技が終了し、メダルの色が決まった瞬間の銅メダリストの幸福点数は10点満点中、7.1点だった。悲痛よりは歓喜に近い点数である。しかし銀メダリストの幸福点数はたかだか4.8点と評定された。歓喜とはほど遠い感情表現である。客観的に成果を見れば、銀メダリストの方が銅メダリストよりも大きな成果を挙げたことは明らかである。しかし銀メダリストと銅メダリスト本人の実感としては、これとは正反対だという結果が出たのである。授賞式でのメダリストたちの感情表現についても、その結果は変わらなかった。

「フレーム」とは、私たちがどう世の中を見るかを規定している「心の窓枠」のようなもの。

言うなれば、色眼鏡で世の中を見るということだろうか。

人間、物事をみるとき、客観的に見ているつもりでも、そこに必ず主観が入るもの。

上記抜き書きは、銀メダリストと銅メダリストを分析したところ、銅メダリストの方が幸福点数が高かったという実例。

なぜ二位の銀メダリストが三位である銅メダリストよりも満足感が低いのか。

それは選手たちが、自分が収めた客観的な成果を、仮想の成果と比較したから。

銀メダリストたちにとっては、その仮想の成果とは当然金メダルだった。

「あのミスさえしなければ、金メダルを取れたのに」と思うのだ。

最高到達点である金メダルと比較した場合、銀メダリストは自分の成果に失望を感じる。

一方、銅メダリストたちが比較した仮想の成果は、メダルを取れないことだった。

もしミスをしていれば四位に終わってしまうところだったのだから、銅メダルへの満足感が強く、銀メダリストの幸福点数を上回った。

客観的に見れば、より低い成果を収めた銅メダリストの方が、より高い成果を収めた銀メダリストよりも幸福点数が高いという逆転現象が起こった。

つまり、私たちが自分がやったことについて、満足するかどうかは、自分が仮想した成果と比較してどうかということにかかっているということ。

幸福感とか満足感というものは極めて主観的なものだということである。

以前、ブータン国王が来日し、ブータンの国民の97%が幸せに感じているということが話題になったことがあった。

客観的に見れば、日本人の方がはるかに豊かな生活をしているにもかかわらず、意外と幸福感を感じている人が少ないのも、そのような点に原因があるのだろう。

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