逃げない力/大橋未歩
打ち合わせ場所の会議室に入って、まっさきに視界に飛び込んできたのは、なんと「メイド服」でした。ご丁寧に、ふりふりのソックスやカチューシャまで、一式そろえてあります。
「え・・・・・・これ・・・・・・私が着るんですか?」
「うん」
「あの・・・・・・スカート、すごく短いですよね?」
「今回はほら、今秋葉原で流行している『絶対領域』っていうのを番組で取り上げるからさ。メイド服から少し出てるこの生足部分がオタク心をつかんでるらしいんだよ~。オタク文化ってのは社会現象にもなってるからさ。大橋に着てもらった方が、視聴者にもより伝わると思うんだよね~」
「え・・・・・・どうしても・・・・・・ですか?」
「ごめん!大橋!番組に勢いつけたいんだ。よろしく頼む!」
会社の上司に頼まれて、結局、私はメイド服を着ました。
入社前は「ニュースを伝える」「番組の進行をする」のが仕事だと思っていたアナウンサー。そのイメージと現実とのギャップに、たまに自分がどこに向かっているのかわからなくなります。
女性にとってあこがれの職業の一つであるアナウンサー。
ただ、それであっても理想と現実とのギャップはある。
局アナといっても結局は組織の一員、
好きな仕事だけやっていればいいというわけにはいかないのが、組織で働く者のつとめである。
そして、実は、仕事に必要な力というものは、やりたくない仕事をやる中で培われることも多い。
逆に、自分に合っていないとすぐに転職をしてしまうのは、何か大きなものを失っている可能性がある。
大事なことは、タイトルにあるように「逃げない」ことである。
いやな仕事であっても、その場にとどまっている限り、何か得るものがあるものだ。
« リーダーは弱みを見せろ/鈴木雅則 | トップページ | 先送りできない日本/池上彰 »
コメント