日韓親考/黒田勝弘
一九九四年、ソウル中心部を流れる漢江にかかる橋が突然、崩壊する事故があった。橋げたが途中ですっぽり落ち、走行中の車が川に転落し多数の死傷者が出た。特異な事故で内外で話題になった。
この時、耳にした話が印象深く記憶に残っている。
漢江を見下ろす住宅街で事故現場をながめながら、住民たちが意見をいい合っていた。
そのとき、さる年寄りが「橋が落ちるなんて何てことだ。日帝時代にできた橋は今もちゃんとしているのに、われわれが最近つくった橋があんなザマとは……」といったところ、そばにいた若者が「おじいさん、それは違うよ。日帝時代がなければわれわれはもっとちゃんとした橋をつくれたんだ。日帝時代があったせいであんな橋しかつくれないんだよ……」といい、口論になったというのだ。
このシーンは、韓国における歴史認識の現状と、世代によるその違いを象徴していて興味深い。
つまりこれは、日本統治時代の経験がなく反日教育で育った若い世代は日本時代については全否定であり、むしろ現在の韓国社会の悪いことやマイナス現象は逆に日本支配のせいだと思っているということだ。これに対し、日本の統治時代を経験した年配世代は日本支配は韓国に「いいこともした」と思っているし、それなりにいいものを残したと考えている、という筆者の「仮説」を図式的に物語ってくれる事例なのだ。
本書が書かれたのは日韓ワールドカップが行われた時期、つまり10年位前のこと。
当時と比べ日韓関係は改善に向かうどころか、最近ますます悪化してきているわけだが、
日本人から見ると、「なぜあんなに感情的になるのだろう」とつい思ってしまう。
特に反日感情は、上記エピソードに象徴されるように、日本の統治時代を経験した年配世代よりも、むしろその時代を体験したことのない、若い世代の方が強いように感じる。
その最大要因が反日教育である。
逆に考えれば、国づくりにおいて教育がいかに重要かということを物語っているといえよう。
良きにつけ悪しきにつけ、日本、中国、韓国の若者の行動は、その国の教育の成果なのだから。
国を建て直すのもまずは教育からということもうなずける。
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