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2012年10月 6日 (土)

吉野家の経済学/安部修仁、伊藤元重

Photo 伊藤 よく冗談でありますよね。運動会のときかなにかに、じゃんけんに負けた一人が、みんなの分のハンバーガーを買い出しに行く。ハンバーガー・ショップに行って、「チーズバーガーを100個下さい」と頼んだら、窓口のお姉さんが「こちらでお召し上がりですか?」(笑)。そういう話は吉野家にはないんですね。
安部 いやいやありますよ。他人事じゃない。要は、マニュアルの背後にあるものを、どこまで理解させられるかということだと思うんです。そのためには、店内でも頻繁にミーティングみたいなことをやるし、社内報ならパート・アルバイトもみんな見ますから、そこでフィロソフィを訴えていく。
伊藤 マニュアルを補ってやる。
安部 そうなんです。特にマスコミの人たちなんかは、マニュアル弊害論とかマニュアル非人間論みたいなこという。「ないほうがいい」というオール・オア・ナッシングの議論になりやすいんです。
伊藤 そうですねえ。
安部 でも、僕は究極の選択でいうと、こう考えるんです。マニュアルがあるためにサービスが過剰になって、それこそ幼児が来ても店員が敬語で話しかけるようなことがあるかもしれない。でも、マニュアルがあることによる過剰のほうが、ないことによる不備よりも、お客さんからすれば、まだ納得いくんじゃないか。敬語をまったく使えない若者なんて、ざらにいるわけですから。そんな店員に不愉快な思いをさせられるよりは、まだましですよね。もちろん、マニュアルに支配されているような運用になってきたときに、そこを調整していく努力は、年がら年中やっていないといけないと思いますけどね。

本書は吉野屋の安部社長に経済学者の伊藤氏がインタビューする形で記されている。

本書が出版されたのは今から約10年前だが、今も基本とするところは全く変わっていないように感じる。

ここで安部社長はマニュアルの重要性について述べている。

全国に何百とチェーン店をもつ吉野屋にとって、二通りの意味で有効な道具だと。

一つは、なんにも知らない初心者に対して、手順とか動作とか適正ボリュームを箇条書きにして、効率よく教えられるという点。

もう一つは、名人の磨き上げたコツ、というのを伝承してゆくために。

それによって、自分で生み出そうとすれば半年かかるものを、一ヵ月に短縮できる。

そして、マニュアルは作っただけで終わらせるのではなく、ミーティングなどで相互学習し、その背後にあるものをいかに理解させるかが重要だ、と。

確かにマニュアルというと非人間的で、「マニュアル人間」という言葉に代表されるように、何も考えない人間を作ってしまうと、否定的な印象を与えてしまいがちだが、

要は、それを是非論でとらえるのではなく、それだけでは非人間的になってしまいがちなマニュアルを、いかに血の通ったものに昇華させていくかが重要だということだろう。

吉野屋ではマニュアルを管理運営しているのは営業部と人材開発部。

いかにマニュアルを重要視しているかということがこんなところにもあらわれている。

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