サムソンの戦略的マネジメント/片山修
「サムスンでは、上司が朝6時半に出社するから、自分も6時半に出社するとか、上司が土日も出勤して働いているから、自分も土日に出勤するとかいう話を聞くことがあります。サムスンの社員は、その働き方についていく。かつての日本の猛烈サラリーマンを彷彿とさせますが、いまの日本人にそんな働き方ができるのでしょうか。おそらくムリでしょうね。
しかし、それ以前の問題として、いまの日本企業に、サムスンと同じ働き方をする必要があるのかどうか…」
日本企業は、現在、業績が振るわない。右肩上がりの昇給は過去の話だ。前述したように、役員報酬を見ても、韓国に比べると断然低いといわれている。
しかし、それでも、日本に留学したり、キャリアを築く過程において日本で生活した韓国人のなかには、このまま日本に残りたいという人が少なくない。なぜか。
韓国は、競争が厳しすぎる、テンションが高すぎて生きづらいというのだ。
日本は、韓国のような急速な経済成長はもはや期待できないが、成熟社会を迎え、韓国に比較して、社会的なテンションは緩い。
サムソンはどうしてあんなに強いのか?
日本企業とどこがどのように違うのか?
そんなことを考えながら本書を読んでみた。
サムソンが躍進したのは、もちろん優れた戦略があるというのも事実。
しかし、戦略は真似することができる。
事実、サムソンは日本企業の戦略を真似て成長してきた。
かつて日本でも、旧松下電器産業は、“二番手商法″の名人といわれた。
“マネシタ電器″と揶揄されたものだ。
たとえば、ソニーが夢のある新商品を開発すると、松下電器は、同じような商品を開発し、ソニーよりも安く販売するなどした。
当時、ソニーは試験台に使われたことからモルモットだといわれた。
サムスンは、日本メーカーをモルモットに、次々とデジタル版“二番手商法″で市場を奪っていった。
まさしく韓国版“マネシタ”である。
しかし、これらは戦略なので、日本企業もまた真似すればよいだけの話。
むしろ、これは日本人は真似できないだろうな、と感じたのは、そのモーレツな働き方である。
サムスンでは、入社後1年で1割、3年以内に3割弱の社員が辞めていくといわれる。
本当に優秀な人しか生き残れない。
サムスン内は猛烈なテンション社会。
超成果主義といえる。
これはサムスンに限らず、韓国企業全体にいえること。
韓国社会において、人生の最高のサクセスストーリーは、大企業のエリートとして活躍すること。
だが、それが本当に人生の成功なのか?
その働き方が幸せなのかが疑問視されつつあるという。
これまでの価値観が、揺らぎつつあるという。
超テンション社会の韓国は、多くの自殺者を生んでいる。
日本の自殺者は、98年以降、13年連続で3万人を超えたが、韓国の自殺率の高さは、割合でいえば日本を上回るとされる。
サムソンの社員はたとえて言えば「短距離走」をしているイメージ。
それに対して日本企業の社員は「長距離走」。
結果的には長い距離を走れる。
勝負は長い目で見なければわからない。
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