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2012年11月23日 (金)

のぼうの城(下)/和田竜

32487253 三成はなにやら笑いが込み上げてきた。
 そして
「負けた負けた、完敗じゃ」
 供回りの者がきくのもかまわず、大声で叫んだ。それは清々しいとさえいえる敗北の宣言であった。
 吉継は、しきりに首をかしげていた。
「わからぬ。なぜあの総大将が、ああも角の多い侍大将どもを指揮できるのか」
 田楽踊で、あの大男の将器を確信した吉継だったが、最前の大広間での、正木、柴崎、酒巻ら重臣どもの成田長親に対する物言いをきいて、とうてい統率できているとはおもえなくなっていた。
「できないのさ」
 三成は、当然のようにいった。
「それどころか何もできないんだ。それがあの成田長親という男の将器の秘密だ。それゆえ家臣はおろか領民までもが、何かと世話を焼きたくなる。そういう男なんだよあの男は」

石田三成は2万の兵をもってしても、僅か5百人の忍城を攻め落とすことができなかった。

成田長親が守る忍城を落城させるため、石田三成は「水攻め」作戦を思いつく。

堤防を築堤し、利根川と荒川の堰を切り、城を水で囲み降参させようとする。

しかし数日後、奇跡が起こる。

なんと堤防は決壊し、三成軍の兵士が多く溺死する。

なぜそのようなことがおこったのか?

舟の上で、田楽を踊るところを敵の銃弾によって撃たれた長親の姿を見て奮起した村人たちが堤防を決壊させた、と、この小説では描かれている。

領民から愛される長親の人柄が堤防決壊へと導いたのだ、と。

でも、本当なんだろうか?

少し出来過ぎのような気がする。

ただ、忍城が石田三成率いる2万人の攻めに屈せず、最後まで徹底的に抵抗したのは歴史上の事実である。

おそらくいくつかの偶然が重なって、この奇跡と思えるような出来事が起こったのではないだろうか。

この小説で描かれている成田長親も、かなりデフォルメして描かれているような気がする。

ただ、リーダーシップを考える上では、少し考えさせられた。

つまりリーダーは必ずしも部下よりも優れている必要はないということ。

強くある必要はないということ。

完璧であることは求められていないということ。

普段からよい人間関係を築くように働きかけ、信頼関係を熟成していく。

そして、いざというときには「あの人のためなら」と、命令されなくても自ら進んで戦うような部下を育て上げておく。

よく言われる「サーバント・リーダーシップ」である。

つまりリーダーを一つの型にはめる必要はないということ。

リーダーの特性や、必要とされる場面によって、求められるリーダーシップの型は違ってくるということ。

そして、あの時、あの場面で、長親のようなリーダーシップがうまく機能したということではないだろうか。

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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