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2012年11月22日 (木)

のぼうの城(上)/和田竜

09408551「和戦いずれかを訊こうか」
 正家は、歯噛みして耐える関東人どもの姿を存分に堪能すると、ようやく本題に入った。
「降るなら、城、所領ともに安堵してつかわすが、小田原攻めに兵を差し出せ。戦と申すなら、我が二万三千の兵が揉みつぶす。当方としてはどちらでも構わぬが、腹は決めていよう。早う返答せよ。わしは朝飯を食うておらぬ」
 薄ら笑いすら浮かべながら、正家はいった。
 ──これよこれ。
 正家は内心歓喜に沸いた。上段の間の田舎者は、恐れに恐れて言葉も出ぬではないか。
 正家はそうおもうなり、忘れていたかのように最後の要求を突きつけた。
「それと、成田家には甲斐とか申す姫がおるな。それを殿下に差し出すよう」
 家臣どもは無言で色をなした。一様に怒りで顔を紅潮させ、小刻みに身体を震わせた。
 だが、長親だけは、違った。みるみる怒りで表情を変える家臣らのなかで、この男はただひとり何を考えているのか一層わからなくなった。
「腹は決めておらなんだが、今決めた」
 長親はようやく言葉を発した。
「なら早ういえ」
 正家がそういった次の瞬間、のちの忍城城代にして忍城方総大将、成田長親は、この田舎城を戦国合戦史上、特筆すべき城として後世に位置付けさせる、決定的な一言を発した。
「戦いまする」
 長親は、そういったのだ。
 家臣どもは皆、唖然となった。言葉は誰からも発せられなかった。

最近、テレビで盛んにこの映画のプロモーションが流れているので興味が湧き読んでみた。

「のぼう」とは「でくのぼう」の略で、この小説の主人公、成田長親のあだ名。

農作業が好きで、よく領民の作業を手伝いたがるが、不器用なため、どちらかというと迷惑をかけている。

表情に乏しい背の高い大男で、のそのそと歩く。

当主の従兄弟であるのに、家臣はおろか百姓らからも、その姿から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれている。

その長親、愚鈍な人物と思われているが、実は非常に誇り高い人物。

戦わずして城を明け渡すようにと高飛車な態度で要求を突きつける長束正家に対して、「ノー」を突きつける。

2万人の豊臣軍に対して、5百人で立ち向かったということだがら驚かされる。

しかも、これは実話だという。

まだ、上巻を読み終わったところなので、その後の展開は知らないのだが、話しとしては非常に面白く、小説や映画にはもってこいの題材だと感じた。

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