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2012年12月 7日 (金)

日本のいちばん長い日/半藤一利

Photo 放送局警備に派遣された東部軍の参謀副長小沼治夫少将が、立会いのため第八スタジオに姿を消したとき、事件が突発した。あっという間のできごとであった。スタジオの外の廊下に、その将校は憑かれたように眼を天井の一角にすえて立っていた。この将校の挙動に不審を感じたのは、東部軍参謀(通信主任)鈴木重豊中佐である。不安感が強く働いて、そばによると、「いまから陛下の放送がはじまるのであるが、警備をいっそうきびしくするように」と鈴木参謀が、その将校に声をかけた。そのとたんであった、将校は軍刀の柄に手をかけると荒々しく叫んだ。
 「終戦の放送をさせてたまるか。奴らをぜんぶ叩ッ斬ってやる」そしてスタジオに乱入しようとした。鈴木参謀はとびかかった。彼の両腕を後ろからはがいじめにし、必死になって暴れる将校をおさえつけて、大声で憲兵を呼んだ。将校はなお抵抗をやめようとしなかった。
 「いいか。不穏なことをさらにするようなら、斬りすててもいい」わめきながら、その男は連行されていった.それは天皇放送直前の、瞬時にして終ったできごとであった。彼は二十人余の部下をひきいていたので、もしそれらがスタジオ(副)に乱入していたらと思うと、鈴木中佐は慄然とするものを感じた。

本書は、昭和20年8月14日午後1時から翌15日正午の玉音放送までの24時間を、時系列で詳細に記述したノンフィクションである。

終戦の当日、戦争継続を主張する一部の青年将校を中心としたクーデターがあった。

最終的にクーデターは失敗に終わったわけだが、そこにいたるまではそれこそ薄氷を踏むような危うさの連続であった。

第二次世界大戦は今の私たちから見れば、どう見ても勝ち目のない戦争。

被害を最小限にするために一日も早く戦争をやめるべきだと考えるわけだが、戦争の継続を主張する青年将校たちにとって、それは売国奴の考え方。

戦争終結が早ければ早いほど損害が少ないからというのも、唯物的戦争観でしかないと結論づけられてしまう。

彼らの考え方は「合理性」とは真逆の考え方である。

万物の所有はみな天皇に帰するがゆえに、国民はひとしく報恩感謝の精神に生き、天皇を現人神として一君万民の結合をとげる、これが日本の国体の精華であると、彼らは確信していた。

彼らの考えるところでは、戦争はひとり軍人だけがするのではなく、君臣一如、全国民にて最後のひとりになるまで、遂行せねばならないはずのものであった。

国民の生命を助けるなどという理由で無条件降伏するということは、かえって国体を破壊することであり、すなわち革命的行為となると結論し、これを阻止することこそ、国体にもっとも忠なのである、と信じた。

「狂気」いってもよいが、彼らもまた時代の子。

あの時代が彼らをつくったのである。

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