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2012年12月12日 (水)

そうか、もう君はいないのか/城山三郎

41ppjjxtfal__sl500_aa300_ 私は、復員してからずっと、ひょっとすると今に至るまで、「はげしく人生が終り、別の生を生きている」という思いに捉われていた。自分を廃墟のように感じていたが、そんな余生に似た人生の中で、私にとって、たしかなものとは何であろうか、とぼんやり考えはじめた。はげしく生き、そして死んでしまった者たちに代って、私は、何ができ、どう生きればいいのだろう。私は大義の呪縛からいかにして自分自身を回復して行けるのだろうか。
 やがて私は、そうした問いかけに対して、小説という形で答えようと決めた。

本書は、作家城山三郎の妻との出会いから死別までをしるしたもの。

著者は人生の中で、二つの大きな喪失感を体験している。

一つは、終戦を迎え、多くの仲間を戦争で失い、自分だけが生き残ったことに対する喪失感、

もう一つは長年連れ添った妻を亡くしたという喪失感である。

前者は、小説家として生きていこうというエネルギーに転化された。

復員以来の虚脱の果てに、軍隊経験とは何であったか、「大義」とは何か、「組織と個人」とは何か、それを自分なりに咀嚼して、一篇だけでも書き残したい、

そんな一心から文学を志した、と述べている。

確かに城山氏の作品は「大義」とか「組織と個人」の問題を問うものが多い。

つまり、終戦の体験は、城山氏の小説家としての原体験となっているようだ。

しかし、妻との死別は城山氏から書く気力を奪っていった。

そう娘さんがあとがきで述べている。

それほど城山氏にとって妻とは大きな存在だったのだろう。

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