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2012年12月15日 (土)

虚構の大義/五味川純平

Bgs12660 大体、日本の用兵家は、小兵力をもって敵の大兵力を撃破または拮抗し得ることを戦術の妙とする、心得ちがいが多かったといえる。織田信長の桶狭間が讃美される所以である。大兵力を迅速に集中して敵の小兵力を破るのが戦理であるにもかかわらず、鶏を割くに何ぞ牛刀を用いんや、といって嗤うのだ。この兵術思想が、しばしば、兵力の逐次投入という最も拙劣な、結果的には最も不経済な戦争指導に陥ることになる。

本書は、元関東軍の兵士だった著者が、自らの戦争体験をベースに書いたもの。

軍隊がいかに理不尽な組織であるかが生々しく書かれている。

そして、犠牲になるのはいつも第一線の兵隊たち。

著者の経験によると、兵隊たちが戦闘を好んだことはないという。

戦闘を好むのは、後方の司令部にいる作戦参謀だけ。

彼らにとって戦闘は、作戦を立てて将棋の駒を動かすのにひとしい。

敗けても、作戦参謀が死ぬようなことはめったにない。

勝てば勲章もの。

その次が、高級指揮官から下級指揮官の順。

戦闘がなければ勲章はもらえない。

勲章は出世への招待券。

だが、兵隊となると、そうはいかない。

武勲をたてておだてられたところでたかが知れている。

吉報が来る前に弾丸が飛んでくる。

死ぬのは戦闘を好む順番とは大体逆なのである。

そして、その軍事作戦は、過去の成功体験に基づいている。

確かに歴史をひもといてみると、信長の桶狭間の戦いなど、小兵力をもって敵の大兵力を撃破したことがある。

しかし、それはあくまでレアケースであって、作戦を立てる場合には、まず何よりも人数や兵器の量をもって敵を圧倒することが基本的な考え方であろう。

合理性のかけらもないというのが実感である。

そして、戦後半世紀以上が経過した現在も、この体質はそのまま引き継がれているような気がする。

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