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2012年12月16日 (日)

陰の季節/横山秀夫

9784167659011 「なあ、部長の現役の頃ってどんなだったんだ?」
「凄かったよ」
「何が?」
「全部さ」
「スーパーマンか」
「まあ──」
 お前ら警務の連中にはわからんだろうが、のところを飛ばして、前島は続けた。
「例えばこうだ──犯人は現場に戻らない」
「なんだそれ、部長の台詞か」
「ああ」
「戻るんだろう、現場に?」
「いや、実際戻らねえんだ。過去十年ぐらいのを調べてみたら、どいつも犯行現場には寄りついてねえ」
「へえ、それで一同、びっくりってわけか」
「そういうことじゃねえんだよ」
 前島は少しむきになった。
「普通に刑事ドラマ見て育ってりゃ、お前が言ったみたいに、ホシは現場に戻る習性があるって思い込むわけよ。じゃあ、実際にヤマ踏んだらどうするよ? 現場なんざ戻らねえよ。パクられると思うからな。わかるだろ?」
「ああ」
「部長は暗にそれを言ってるわけよ。デカ部屋で後生大事に引き継がれてきた金言だって時効ってもんがある。きょうび、デカや鑑識のネタなんてな、俺たちの想像以上に娑婆にタレ流しになってんだ。デカよりデカの知恵を持ってるホシもいる。要は、デカが、俺はデカでございって自惚れを捨てる。そこからホンモンのデカが生まれてくる、ってな」

横山秀夫の短編だが、非常に面白かった。

警察組織のことが詳しく描かれており、特に天下りとはどのような形で行なわれるのかが描かれていて参考になる面も多い。

中でも興味深いのは、その事件解決のカギが「犯人は現場に戻ってくる」というこのこれまでの刑事の常識を覆すことにあった、というもの。

この元刑事は「犯人は現場に戻らない」という仮説をもとに犯人を追い詰めていく。

常識を疑うことから問題解決の糸口が見えてくる。

つまり、私たちが様々な問題を解決しようとするとき、壁になるのは「常識」というもの。

「常識」はある面、思考停止を助長する。

聖域を設けてしまうのである。

これなど、ビジネスの現場にそのまま当てはまるのではないだろうか。

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