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2012年12月13日 (木)

ネット帝国主義と日本の敗北/岸博幸

Photo ネット上では、コンテンツ・レイヤーに位置するマスメディアやコンテンツ企業がプラットフォーム・レイヤーのネット企業に搾取され、同時にプラットフォーム・レイヤー上は米国ネット企業の帝国主義的な世界展開による一人勝ちという状態になっています。今起きているのは、米国ネット企業による世界のマスメディアやコンテンツ企業の搾取と、その結果としてのジャーナリズムや文化の衰退なのです。
 悪く言えば、米国ネット企業による世界のネットのコンテンツ・レイヤーとプラットフォーム・レイヤーの植民地化です。

グーグルやアマゾンなど、今やこれらのネットを利用しない日はないくらい日常生活に入り込んできている。

これは米国ネット企業による植民地化である、と著者は警告する。

陰謀というのは言い過ぎだろうが、私たちが知らないうちにネットなしには生活できないくらい、その思考や生活習慣が支配されてしまっていることは確かなようだ。

特に一番危惧されることは、ネットが浸透することにより、質のよいジャーナリズムが衰退してしまうのではないかということ。

今やネットを通してタダで新聞記事を読むことができるようになってきた。

もちろん、それは新聞記事の一部ではあるが、それであっても、日常生活に困らない位の情報は得ることができる。

これがひいては新聞販売部数の減少を招くであろうことは容易に想像できる。

新聞社の経営がくるしくなれば当然取材にお金をかけることができなくなる。

そしてやがてはこれらの要素が重なって質のよいジャーナリズムは衰退していく。

十分に考えられることである。

そして著者がもう一つ危惧していることは、日本のコンテンツ産業の衰退を招くのではないかということ。

近年、日本の強みとして見直されてきたものに、マンガやアニメ、日本の伝統文化といったソフトの部分がある。

国際政治の世界には「ソフトパワー」という概念がある。

武力や経済力といった相手国を押し倒す力である「ハードパワー」に対峙する概念で、

周りの国を自国のファン、味方にすることによって、国際合意の形成などで有利な立場に立つという、相手国を引き込む力を意味する。

ハードパワーは強くないけれどソフトパワーが強い国の典型例はイタリアである。

GDPは世界第7位で欧州の中では英独仏より下位と、経済力は他の先進国ほど強くないが、ローマ文明やルネッサンス文化の発祥の地、食文化の高さなど、文化の力が高く評価されている。

それ故に重要な先進国の一つとして認知され続けている。

経済力がこれから低下する日本が目指すべきは、イダリアのようにソフトパワーが強い国ではないだろうか。

ところがネットはこれらコンテンツさえもタダにしてしまう危険性がある。

これは日本にとって由々しき問題である、

と、これらが著者の主張である。

ただ、私自身の認識としては、そうは言っても時計の針をもとに戻すことはできないわけだから、むしろネットをうまく利用して、自らの価値を高めるようなモデルを創造することの方が大切ではないかと感じている。

もちろん、具体的に「これだ」という案があるわけではないのだが。

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