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2013年2月21日 (木)

帝国ホテル厨房物語/村上信夫

Photo 帝国ホテルで、数え切れないほどの若い料理人に接してきた。前にも述べたが、無言のげんこつで鍛えるのは時代遅れだと考え、「げんこつ禁止令」を出した。言葉で丁寧に教え、秘伝だったレシピを公開することで、厨房に教え学ぶ連鎖を植えつけようと思い、実践したのだ。
 また、私が駆け出しのころは、シェフが持っているフランス語の料理書がうらやましくて仕方がなく、仕事が終わってから必死で盗み見たものだ。私は喜んで読ませ、コピーも許可した。だから、私の古典書はぼろぼろだ。
 叱るのではなく良い所をほめるのが、私の若手育成法の基本になっている。もちろん、注文をつけ、悪い点は指摘するが、感情的にものを言ったり、怒鳴り散らしたりはしないようにしてきたつもりだ。
 じつは、私が厨房で怒らないのには、もう一つ理由がある。味付けに影響するからだ。私の前に総料理長をつとめた一柳一雄さんは頑固一徹の職人肌で、どちらかというと瞬間湯沸かし器。だが、怒ったときは味付けはおろか、味も決して見なかった。怒ると塩味がきつくなることをよく知っていたからだ。
 怒ったときは塩味がきつくなる。だから私は、今の田中料理長がまだ若いころ、こうアドバイスをした。「朝、出社前に、奥さんとケンカするなよ」。

本書の著者、村上氏は長年帝国ホテルの味を守り続けてきたフランス料理界の第一人者。

昔から、料理人は先輩の味を盗んで一人前になっていくものだという考え方がある。

先輩の下働きをしながら、鍋の底に残ったソースをなめて味を盗んだりして腕をあげていく。

ところが、先輩は先輩で、自分の味を盗まれまいと、鍋に塩を振って嫌がらせをする。

そんな辛い思いを乗り越えてこそ一人前になれるのだとよく言われたものだ。

今で言う体罰など日常茶飯事の世界である。

多くの職人の世界がそうであったし、今もそれが残っている世界はかなりある。

しかし、村上氏は、これは時代後れだと考え「げんこつ禁止令」を出したという。

また、秘伝だったレシピを公開したという。

これは料理人の世界では画期的なことではなかったろうか。

しかも、同時に非常に合理的な考えでもある。

怒りや恐怖からは決してよいものは生まれないものである。

しかし、いまだに古い考え方に凝り固まっている人達が多くいるのも事実である。

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