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2013年2月17日 (日)

さっさと不況を終わらせろ/ポール・クルーグマン

Photo 一見真面目そうな人たちが、現在の経済状態について語るのをあれこれ聞いていると──そしてぼくは経済評論家でもあるので、まさにそれをやらざるを得ない──やがてその人たちの最大の問題点が見えてくる。みんなまちがった比喩を使って考えているのだ。アメリカが、苦境に陥った家族であるかのように考え、所得に比べて負債が多すぎるのだと考える。だからこの状況の改善への処方箋は、美徳と倹約だ。ベルトを引き締め、支出を減らし、借金を返済し、費用をカットしなければいけません、というわけだ。
 でも、これはそういう種類の危機じゃない。所得が落ちているのはまさに、支出が少なすぎるからで、支出を削れば所得はさらに下がるだけだ。過剰な負債という問題は抱えているが、その負債は外部の人に対する借金ではない。アメリカ人がお互い同士に行っている貸し借りで、これは話がまったくちがう。そして費用カットだが、だれと比べての費用カット? みんなが費用カットを試みたら、事態は悪くなる一方だ。

今、アベノミクスが話題になっているが、その理論的な裏付けとも言うべきものが本書である。

クルーグマン氏の主張は極めて単純。

要は、現在の不況を脱出するために必要なのは、大胆な政府支出をド-ンと行なおうということだ。

昔ながらのケインズ的な財政出動をやろう。

赤字国債を出して、大量の公共事業をやろう。

今まで行なわれている景気刺激策は小さすぎる。

これまでの数百倍をドーンとやるべきだ。

ちゃんとGDPの需要と供給のギャップを見て、それを埋める規模のものを一気にやるべきだ。

そして中央銀行はそれを金融緩和で徹底的に支援すべきだ。

それに伴う財政破綻や金利上昇などはまったく心配する必要はない。

積み上げた負債はそんなに慌てて返済する必要はないし、それどころかまったく返済せずにすむかもしれない。

実は、負債が増え続けても別に悲劇ではない。

それがインフレと経済成長の合計よりも伸び率が低ければ、問題にはならない。

まとめればこんなところだろうか。

その実例として第二次世界大戦後のアメリカ経済のことをあげている。

第二次世界大戦末にアメリカ政府は2410億ドルの負債を抱えていた。

当時の感覚で言えば、返済不可能なほどの大金である。

多くの経済学者は、戦争が終わったらアメリカが不況に逆戻りすると思っていた。

でも代わりに起きたのは、民間支出の急増、特に住宅購入の急増で、それが経済をフル回転させ、やがて大恐慌は遠い思い出になってしまった、というのである。

素人の私には、そんな単純な話でいいのか? そんな簡単にいくだろうか? と、つい考えてしまうのだが、クルーグマン氏は心配する必要はない、と断言する。

アベノミクスを理解するには必須の本と言ってよいだろう。

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