池上彰の政治の学校/池上彰
このように、1月の予備選挙開始から11月の本選挙まで、生き残った候補者たちは徹底的に鍛えられて大統領になるのにふさわしい力をつけていくのです。ですから、11月の一騎打ちまで辿りついた人は、その組織力の点でも、個人の能力の点でも、どちらの候補でも大統領が務まるように自然になっています。つまりアメリカ大統領選挙というのは、政治家を「選ぶ」だけでなく、政治家を「育てる」仕組みだとも言えるのです。
一方、日本の場合は突然、首相が生まれてしまいます。十分な準備がないまま、総理大臣になることもある。こんな調子だからお粗末なことが起きるのです。
池上氏が政治についてわかりやすく語っている。
中でも、一国のリーダーを選ぶシステムについての日米比較は興味深かった。
アメリカの場合、大統領になるためには11ヶ月間の選挙戦を勝ち抜かなければならない。
最初の時点での候補者の力関係で全てが決まるわけではない。
長い選挙戦の中で、ある候補は力をつけていくし、ある候補は力を奪われていく。
資金力があれば勝てるとも限らない。
僅かな資金で選挙戦を始めたとしても、勝つことによって全米を組織できる力を得るようになることもある。
まさにオバマがそうで、本当に僅かな個人の政治献金が次々と集まっていき、大きなお金になり、ついには大統領になってしまった。
一方、注目されればされるほど、候補者個人に向けられたネガティブ・キャンペーンも厳しくなる。
徹底的に身辺調査が行なわれ、スキャンダルもたくさん暴かれる。
それに耐えられない候補者はそこで脱落していく。
このような中で勝ち抜いた候補者が大統領になる。
つまり、この11ヶ月間は、大統領を選ぶシステムであると同時に大統領を育てるシステムでもある、ということ。
だから、それなりの人物が大統領になるのである。
それに比べ日本はどうであろう。
密室の話し合いで決まったり、派閥の力関係で決まったり、一国のリーダーを育てるシステムは全くないといってよい。
だから、総理大臣が猫の目のように変わるという現象が起こる。
日本も国のリーダーを選ぶ仕組みを考える時期に来ているのかもしれない。
« 統計学が最強の学問である/西内啓 | トップページ | 経済の自虐主義を排す/三橋貴明 »
コメント