« 採用基準/伊賀泰代 | トップページ | 数字のカラクリを見抜け!/吉本佳生 »

2013年3月 1日 (金)

あなたの中の異常心理/岡田尊司

9784344982451 人間は、二面性を抱えた生き物である。誰でも影の部分をもっている。正しいことをしたい気持ちがあれば、それとは裏腹に、悪いことをしたい衝動も潜んでいる。それが人間である。その二面性を無視して、正しいことや善いことだけを求めると、おかしなことが起きてしまう。
 なぜ社会的地位もある人が、少女のスカートの中を覗いて捕まるのか。有名人が万引きや覚醒剤で逮捕されるのか。普通の母親がわが子を虐待死させてしまうのか。 こうした事件は、決して特別な人にだけ起きる特別な事件ではない。多くの人が、似たような危うさを、自分の中に抱えているのだ。

異常心理というと、特別な人のことを想像しがちだが、著者によると、そうではないという。

むしろ、普通の人がある状況の中で異常な行動を取る。

異常な症状とされるものにしても、それがすぐさま精神障害であるといえるような症状はほとんど存在しない。

どういう症状であれ、状況次第で一時的に健康な人にでも出現し得る。

正常と異常の境目は程度や頻度の差でしかない、という。

そして本書では、その題材として、様々な有名人の例をあげて説明している。

例えば三島由紀夫は強い完璧主義者であった。

一語一句ゆるがせにしないその完璧なまでの文体と、極めて完成度の高い作品からもそれをうかがうことができる。

その完璧主義はその性格やライフスタイルにも染みついていた。

どんなに仕事が立て込んでいても、締め切りを守らなかったことは一度もなかった。

そして、その完璧さは他にも向けられた。

例えば作曲家の黛敏郎とオペラの仕事をしたときのこと。

黛の作曲が締め切りに間に合わず、黛は詫びを入れ、上演時期の延期を申し出たが、三島はその作品の上演自体を取りやめた。

以降、三島は黛と絶縁したという。

完璧主義は両刃の剣である。

よい方に働けば、妥協のない作品にあらわれる。

しかし、悪い方に働けば、悲惨な結果になるかもしれない。

現に、その完璧主義は三島を自決という凄惨な最期へと追い詰めていく。

その他にも、ガンジーの潔癖主義、

ドストエフスキーのひがみ根性、

夏目漱石の被害妄想、

ユングやニーチェの過敏症、

ラッセルのナルシズム、等々、

このように、後世に残る偉大な業績を残した人の中には、異常さと紙一重という人が多い。

逆に言えば、異常さと紙一重の状態だったからこそ、それがある種のエネルギーとなって、作品を残したと考えられなくもない。

そして、忘れてならないのは、その異常さは普通の人の中にもあるということ。

何かの拍子に人は異常心理の世界に呑み込まれ、不可解な考えや行動にとらわれてしまう。

つまり人間とは二面性をもった生き物であるということである。

« 採用基準/伊賀泰代 | トップページ | 数字のカラクリを見抜け!/吉本佳生 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あなたの中の異常心理/岡田尊司:

« 採用基準/伊賀泰代 | トップページ | 数字のカラクリを見抜け!/吉本佳生 »