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2013年4月 6日 (土)

沈まぬ太陽(三)/山崎豊子

51fgyjhwexl_ss500_ 「次に、会社の分裂労務政策が、事故の背景である点について申し述べます」
 傍聴席の人々は、意外な事の成り行きに顔を見合せた。
「ご承知のように昭和四十五年、機長管理職制度が、会社の労務政策として実施されました。世界にも例のない制度です。その結果、会社の方針に忠実であることが自分の保身術となり、おかしいと思うことも口に出して云えなくなりました。(中略)
 ここで重要なのは、国民航空労組が、会社の労務政策によって二つに分裂させられ、会社によって組織された会社に忠実な組合が、安全運航をチェックする機能を果せなかったという点です。例えば燃料の削減、部品の削減、人員削減など安全に反することばかりが行われて来ました。現場の整備員は完全に整備して出発させたいと思っても〝部品がない、時間がない、人手がない〟という状況もあった。 乗員の職場でも、機長が管理職であるため、会社に対してものを云うことが出来ず、組合員である副操縦士、航空機関士との間に、垣根があったことは事実です。
 この事故を考える場合、会社のとって来た分裂労務政策と、その結果の営利優先、監督官庁もそれを許して来た点に言及せずして原因究明を行うことは、片手落ちと云わざるを得ません。この点に関し、再調査が必要と考えます」
 営利優先の会社の体質を、赤裸々に述べ、公述を終えた。

国民航空は航空史上最大のジャンボ機墜落事故を起こす。

犠牲者は520名。

当然、国会の場でも事故原因を追及される。

問題は、現場の声が経営トップに届かない企業体質である。

コストや効率性ばかりが強調され、安全を求める現場の声が全く経営に反映されていない。

証言では、国民航空労組が、会社の労務政策によって二つに分裂させられ、会社によって組織された会社に忠実な組合が、安全運航をチェックする機能を果せなかったという点が述べられている。

では、労組がきちんと機能すれば事故は防げたのか。

それも違うような気がする。

労組の活動があまりにも過激になりすぎると、経営はうまくいかなくなる。

日本の中で、企業内労組がない企業はいくらでもある。

その中でも顧客第一主義を徹底している企業も多く存在する。

要は経営者の姿勢である。

労組がなくても、経営者に聞く耳があれば、現場の声は聞こえるはずである。

経営者に安全を第一にしようという姿勢があれば、たとえ労組がなくても安全は確保されるはずである。

この小説で描かれている国民航空は、経営者も管理職も社員も、みんな上しか見ていない。

経営者はお役所や議員の言動ばかりを気にしている。

管理職は自分の出世と保身のことしか考えていない。

社員は上司から気に入られることばかり考えている。

ヒラメ社員の集団である。

事故は起こるべくして起こったと言わざるを得ない。

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