« 沈まぬ太陽(四)/山崎豊子 | トップページ | 必ず覚える!1分間アウトプット勉強法/齋藤孝 »

2013年4月 8日 (月)

沈まぬ太陽(五)/山崎豊子

51evscx2dvl_ss500_  御巣鷹山事故後、総理の意向で、国見が会長に就任してからは、社内の綱紀が粛正され、腐敗は一掃されるかのように見えた。だが、長年巣喰った魑魅魍魎は、人事の公正、組合統合、財務面の乱脈をも正そうとした国見に対し、面従腹背で、会長追い出しを謀った。
 国会でドルの十年先物予約による膨大な損失が追及されるや、〝閣議決定〟によって、経営責任を問わずと、幕引きされてしまったのだ。一国の最高意思決定機関である閣議で、半官半民とはいえ、一企業の問題を取り上げ、幕引きを図るとは、国民を蔑ろにし、畏れを知らぬ行為と云わずして何であろうか。
 恩地の脳裡に、ニューヨークのブロンクス動物園で見た「鏡の間」が甦って来た。その鏡に映る人間こそ、この地球上で最も危険で獰猛な動物であるという痛烈な警告であった。
 国民航空にはびこる権謀術数、私利私欲の集団は、まさに、その警告通りの輩である。国見を辞任に追い込んだのも、再び自分をアフリカへ追いやるのも、この獰猛なものたちによる仕業であった。

この日航をモデルにした小説のラストはハッピーエンドではない。

主人公の恩地は再びアフリカへ追いやられ、国見会長は辞任に追い込まれる。

労働組合や内部抗争や粉飾会計の問題も放置されたまま。

事故後も、ドルの十年先物予約を続け、膨大な為替差損を出しながら、〝閣議決定〟によって、経営責任を問わずという政治決着をつける。

これは、企業倫理の欠如であり、事故に対する贖罪の意識の希薄さは言語に絶する。

何とも言えない後味の悪さが残る。

しかし、これが作者のねらいなのかもしれない。

ここで引用されているニューヨークのブロンクス動物園内の「鏡の間」にすべてが象徴されているのではないだろうか。

ブロンクス動物園のマウンテン・ゴリラとオランウータン舎の間に、鉄格子をはめ込んだ檻がある。

その鏡の前に立つと、自分の姿が映しだされる。

そして、その檻の上にこのように記されている。

「THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD(世界で最も危険な動物)」

それが「鏡の間」である。

地球上で最も危険な動物こそ、この鏡に映っている人間であると。

何という痛烈な皮肉であろうか。

権謀術数をめぐらせ、私利私欲に群がる獰猛で、醜悪な人間の姿。

作者が一番描きたかったことなのかもしれない。

« 沈まぬ太陽(四)/山崎豊子 | トップページ | 必ず覚える!1分間アウトプット勉強法/齋藤孝 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 沈まぬ太陽(五)/山崎豊子:

« 沈まぬ太陽(四)/山崎豊子 | トップページ | 必ず覚える!1分間アウトプット勉強法/齋藤孝 »

2019年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
フォト

井上労務管理事務所

無料ブログはココログ