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2013年4月 7日 (日)

沈まぬ太陽(四)/山崎豊子

51jqlryxml_ss500_ 「会長、今まで、コックピットにいらしたそうでございますね」
 随行して来ている川野秘書課長が、ビジネスクラスの席から飛んで来た。
「狭い中で、乗員には迷惑だったかもしれないが、いろいろ勉強させて貰ったよ」
「迷惑どころか、きっと意気に感じていますよ、歴代の社長でコックピットを覗いた方はいらっしゃらないそうですから」
 出発までにさんざん聞かされていたが、国見には信じられなかった。航空会社は飛行機に客を乗せることで、経営が成りたっている。さしずめ関西紡績で云えば、各地の綿紡、合繊工場を視察し、技術レベルを確め、従業員を犒うことと同じであった。扉一枚、開ければ出来ることを、行わない会社は、やはり異常であった。

時の総理大臣から国民航空再建のため三顧の礼で財界から迎えられ会長に就いた国見(モデルは鐘紡会長だった伊藤淳二)

これなどは、政府が破綻した日航立て直しの為に、関西財界を代表する稲盛和夫・京セラ名誉会長に委ねたこととそっくり重なる。

会長に就任した国見が最初に行ったのは現場を回り現場の社員の声を聞くということだった。

自ら進んで航空機の整備の様子を見学し、整備士に直接質問する。

飛行中のコックピットに入れてもらい、パイロットの仕事ぶりを体感しようとする。

多くの優れた経営者は現場を大事にし、現場の声を積極的に聞こうとする。

これは言わば経営の王道とも言えること。

現場を知らずして経営など出来るわけがない。

ところが、歴代の国民航空の経営者はこれを全く行っていなかったという。

やっていたのは、もはやお家芸とさえいえる派閥抗争。

やがてこの力は、新会長を追い出す方向で働く。

最後には、国見会長は辞めざるを得ない状況まで追い込まれる。

結局、経営破綻というところまでいかなければ、この組織は変われなかったということであろう。

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