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2013年4月 4日 (木)

沈まぬ太陽(一)/山崎豊子

517970bd5gl_ss500_ 「ところで君も予算室勤務が、足かけ三年になるね、そろそろ出る時間じゃないかな」
 軽い口調で、切り出した。
「ですが、組合の仕事で席を空けることが多かったので、上司や同僚に迷惑をかけた分、これから一生懸命、勉強しながら、頑張らねばと思っています」
「だけど、この半年、充分過ぎるほど、働いてくれたと思っている、実は転勤話があるのだ」
 柳は、痣のある右眉を動かして云った。恩地は内心、はっとしたが、
「せっかくですが、私は転勤したくありません、勉強しなければならないことが山ほどありますし、この仕事にやり甲斐を感じています」
「君がそう思っているのは勝手だが、会社はそう思っていないのだよ」
 いきなり、ばさりと切り捨てるように云った。恩地は返す言葉がなかった。
「まあ、世の中にはいろいろと、うるさいことを云う人がいるんだ、おとなしく従った方が、身のためだ」

国民航空(JALがモデル)に入社しエリート街道を歩むと思われた主人公の恩地元は、半ば強引な手法で労働組合の委員長に就任させられる。

委員長になった恩地は社内的に不平等であった様々な立場の社員の待遇改善の為に全力で会社側と団体交渉にあたり、社員の大半から支持される。

ところが委員長の任期を終えた恩地を待っていたのは、会社側の執拗な報復人事であった。

恩地は当時過酷な環境下にあったパキスタンのカラチへの赴任を命じられる。

更に、これはほんの手始め。

その後10年にもわたり過酷な環境下の海外赴任は続けられる。

本書はフィクションとされているが、内容の大部分は綿密な取材をもとにしるされており、事実に近い。

事実、恩地元のモデル、小倉寛太郎氏は約10年間の海外(カラチ、テヘラン、ナイロビ)での勤務を強いられている。

2010年、JALは経営破綻した。

企業がつぶれるのは外部要因ではなく内部要因によるとよく言われるが、この小説を読むと、そのことがよくわかる。

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