沈まぬ太陽(二)/山崎豊子
「残念ながら、国民航空はものが云えない職場と云われるほど、労使関係は正常ではありません。アンケートにも、95パーセントの乗員が『安全の基礎となる労使関係が非常に気になる』と答えています。
その大きな原因は、国民航空には多くの不当労働行為があるからです。昭和40年に、乗員組合には4名が解雇されましたが、この問題について会社は、裁判所あるいは労働委員会で、すでに21回も解雇無効の判決あるいは命令を受けているにもかかわらず、単に裁判を取り下げただけで、解雇事件の全面的な解決には至っておりません。」
国民航空はインドなどで立て続けに飛行機事故を起こす。
この事故が契機となり衆議院で特別委員会が開かれる。
上記は、国民航空のパイロットである参考人の証言。
この証言からも伺えるように、この半官半民の航空会社の労使関係はかなり問題がある。
というより、本書を読んでいると、この第2巻まで、ほとんど労使関係の記述で占められている。
自分の出世のことしか考えていない経営層と、対立を繰り返す労働組合。
それぞれが自らの権利と既得権を主張する。
そこには「顧客」という視点が全く出てこない。
仕事柄、普段は使用者側に立って考えることが多いのだが、それにしたって、この会社の労使関係は問題がありすぎる。
この後、520名の犠牲者を出す前代未聞の大事故を起こすわけだが、明らかにこれは人災だと言えよう。
この企業の体質と事故を起こすまでの経緯、東電とよく似ている。
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