ヤバい経営学/フリーク・ヴァーミューレン
経営合理化についてもう少し考えてみよう。効果は実証されているだろうか。また、今まで本当に効果があっただろうか。実はその答えは、一言で言えば、「効果なし」だ。(中略)
カンザス大学のジェームズ・ガスリー教授とテキサス大学アーリントン校のディーパック・ダッタ教授は、この問題をもっと体系的に調査した。二人は、人員削減を行った122社の詳細なデータを集め、さまざまな統計的手法を使い、人員削減が利益率向上に貢献したか調べた。その結果は「貢献しない」だった。(中略)
なぜ人員削減策がうまく機能しないのか。最初に言えるのは、想像のとおり、残った社員のモチベーションを下げるからだ。人員削減の後は社員のやる気も減退し、自己都合退職が増えることが、アカデミックな研究で明らかになっている。
米国のビジネス界では常識とされている経営手法がある。
M&A、リストラ、成果主義、等々である。
しかし著者は、これらの「常識」に対して疑問を投げかけている。
例えば、人員削減という手法。
業績を改善させる最も手っとり早いやり方は、固定費の大部分を占める人件費を削減すること。
つまり、人員削減という手法である。
これにより企業の収益は一気に回復する・・・と経営者は考える。
米国の企業ではこれは当たり前の手法として大部分の企業が実践している。
しかし、綿密な調査を行った結果、人員削減が利益率向上に貢献したケースは無かったという。
それどころか、それによって経営がおかしくなってしまった例があった、という。
最近よく出てくるグローバリズムという言葉。
日本企業も世界に出て行く以上、グローバリズムに対応しなければならない、とよく言われる。
そして、多くの場合、グローバリズムとはイコール、アメリカンスタンダードである。
しかし、米国発の経営手法がすべてうまくいっているわけではない。
中には弊害もある。
そして、日本の伝統的経営手法でよいものはいくらでもある。
日本の経営者はもっと日本の伝統的な経営手法に自信をもってよいのではないだろうか。
こんなことを考えさせられる本である。
« 東電OL禁断の25時/酒井あゆみ | トップページ | 英傑の日本史 激闘織田軍団編/井沢元彦 »
コメント