サッカー戦術クロニクル/西部謙司
オランダのトータルフットボールは近代サッカーの革命だった。74年のオレンジ軍団は「未来のサッカー」と称賛された。しかし、オランダのサッカーがそのまま現代で行われているかというとそうではない。ある意味、早すぎたチームであった。
しかし、その後80年代末に現れたACミランの戦術は、現代サッカーにほぼそのまま受け継がれているといっていい。
やはり1人の天才的なコーチがすべての出発点になった。アリゴ・サッキなくして、ミランの〝ルネッサンス〟は語れない。(中略)
サッキは選手としての輝かしいキャリアを持っていなかった。それどころか、プロ選手ですらなかった。リヌス・ミケルスがそうだったように、名選手でなくても名監督となった例はいくらでもある。ただ、プロ選手の経験すらないとなるとさすがに珍しい。
「よい騎手である以前に、よい馬である必要はない」
サッキは記者会見で名言を吐いたが、監督就任当初の風当たりは非常に厳しかった。
本書はトータルサッカーを軸に、サッカーの戦術の変遷について記されている。
現代サッカーを語る上で、エポックとなる出来事は、74年西ドイツワールドカップのオランダ代表チームのトータルサッカーであろう。
大会の優勝チームは西ドイツだったが、人々の記憶に残っているのはむしろオランダチームであった。
特にキャプテンのヨハン・クライフを中心に展開されるトータルサッカーは衝撃的だった。
この大会を機にトータルサッカーという言葉が世界中に広まった。
そして、それを更にチームの戦術として確固たるものにしたのはACミランの監督、サッキであった。
面白いのは、当時のサッカー界にとって革新的なトータルサッカーを取り入れ定着させて功労者であるミケルスもサッキも名選手ではなかっということ。
それどころかサッキはプロ選手ですらなかった。
これが日本のスポーツ界と大きく違うところ。
日本では野球、柔道、相撲というスポーツの監督は、偉大な成績を残した名選手がなることが多い。
しかし、これが大きな問題を最近ひき起こしている。
でも、考えてみたら、名選手が必ずしも名監督・名コーチになれるわけではない。
サッキ監督が言っているように「よい騎手である以前に、よい馬である必要はない」のである。
日本のスポーツ界が、なかなか変われないのも、こんなところにあるのかもしれない。
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