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2013年6月27日 (木)

さかのぼり日本史⑥江戸/磯田道史

Photo  一つ指摘しておきたいのは、松前奉行が「民命」という言葉を用いて人命尊重の考えを示しているように、身分制度に縛られた当時の世の中で、「民の生命や財産を守る」という価値観が社会のすみずみまで共有されていた―― という事実です。
 幕府のこうした価値観を如実に表す逸話があります。幕末、徳川幕府は長崎に西洋医学の病院を建てました。その用地として一人の貧しい農民に土地の譲渡を頼んだところ、幕府の申し出にもかかわらず、農民は頑かたくなに拒否しました。これに対して幕府は強制的に土地を奪うどころか、その農民の言い分を認めて別の土地をあたることにしたというのです。今日であっても、国家・政府の目的に公共性があれば、土地収用はなされます。しかし、幕府はそうしなかった。徳川二百年の歴史がつくりあげてきた、民の生命財産を尊重する価値観が、こうした出来事から垣間見えるのです。

日本は世界でもっとも安全な国といっても良い。

落とした財布が世界で一番もどってくるのは日本。

日本では自動販売機が盗まれない。

日本人はこれを当たり前と考えているが、世界の中でこんな国は珍しい。

そしてこのような「民の生命や財産を守る」という価値観は、上記のエピソードが示す通り、江戸時代260年の歴史の中で培われていったといって良い。

少なくとも戦国時代までの日本はそんなことはなかった。

これほど長い間、徳川幕府が泰平の世を保ったことは世界でも類がない。

ただ、江戸時代は何もせずに平和であったわけではない。

内乱、自然災害、侵略、いくつも危機や分岐点があった。

しかし、その時代の人々は、そのたびに必死になり知恵を出して、それらを乗り越えてきた。

とするならば、江戸時代の人々の姿には、きっと、われわれが学ぶべきところが多くあるはずだ。

歴史を学ぶ意味はこんなところにあるのではないだろうか。

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