« 変な人の書いた世の中のしくみ/斎藤一人 | トップページ | 人は見た目が9割/竹内一郎 »

2013年6月17日 (月)

事故がなくならない理由/芳賀繁

Photo  スロビックらの研究グループは1970年代後半の研究で、一般人と専門家に30種類のリスク源(ハザード)について、そのリスクの大きさを主観的に見積もってもらった。その結果、専門家が評価したリスクの大きさは、各リスク源の年間死亡者数にほぼ比例する(相関係数0.97)のに対し、女性、大学生、ビジネスマンの回答者グループでは、どのグループも0.50~0.62の相関しかなかった。
 典型的な違いは原子力発電所で、専門家が30種類のリスク源の中の20位に評価したのに対し、女性と大学生は1位、ビジネスマンで8位の高さだった。総じて、専門家のリスク評価は、「被害の大きさ被害の発生確率」に基づいているのに対し、一般人のリスク評価の基準は、もっぱら被害が生じたときの被害の大きさに依存しているようである。

専門家の意見と国民の意見が異なることは度々ある。

専門家は客観的なデータによって判断するのに対し、国民は印象度によって判断するからである。

特に、原発やBSE等、衝撃的な映像があり、マスコミで大きく取り上げられる問題については、国民は総じてリスクを高めに考える。

たとえば、ヤコブ病にかかると、視覚異常、歩行障害から始まり、認知症が進行し、脳が海綿のようになって死に至る。

だれもが決してかかりたくない怖い病気である。

しかし、BSE(狂牛病)にかかった肉を食べたために感染した可能性がある変異型ヤコブ病の患者は世界に224人しか確認されておらず、そのうちイギリスとフランス以外で発見され た患者は24人に過ぎない。

日本人では、イギリスに滞在していた人が一人感染した可能性があるといわれている。

要するにきわめてまれな病気なのである。

ところが2003年にアメリカで一頭の牛がBSEに感染していることが判明して、日本はすぐにアメリカからの牛肉輸入を停止した。

その後、生後20か月以下の若い牛の、脳や脊髄などの「特定危険部位」を除いた部分の輸入が認め られたが、この決定については、消費者団体やマスコミから、「アメリカの要求に屈して国民の健康を危険にさらした」との激しい批判があった。

たとえBSEに感染した牛の肉を食べても、そう簡単にヤコブ病になりはしないのだが、悲惨な病気の実態を映像などで見た人は、あんな恐ろしい病気の原因になるかもしれない肉を輸入するのは、非常に大きなリスクと感じるのだろう。

一方、日本では2011年に大腸菌O157やO111などによる食中毒で11人が死亡し、フグの毒で毎年約50人の中毒患者が発生し、そのうち数名が死亡しているという。

つまり客観的なデータによれば大腸菌O157等の方がよほどリスクが高く、対策が求められるのに、これについてはあまり話題にならない。

特にマスコミは視聴率の取れる話題をどうしても優先的に報道するので、世論を間違った方向に誘導する傾向がある。

また、それによって世論が形成される。

そうすると政治家はそれを無視するわけにはいかなくなり、政治をも動かすことになる。

国は最適なリスク対策を取れなくなる。

リスクということを考えた場合、これほどのリスクはない。

これについては、やはり日本のマスコミ報道に多くの問題があると言わざるを得ない。

« 変な人の書いた世の中のしくみ/斎藤一人 | トップページ | 人は見た目が9割/竹内一郎 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 事故がなくならない理由/芳賀繁:

« 変な人の書いた世の中のしくみ/斎藤一人 | トップページ | 人は見た目が9割/竹内一郎 »