Tweet & Shout/津田大介
震災後から4カ月となる2011年7月、プレジデント社から『スペンド・シフト』という邦訳本が発売された。これは、9・11やリーマンショックを経て、米国の消費者のマインドが、他者に見せびらかすブランドから「丈夫で長く使える」「作り手との絆を感じられる」「自分らしさをカスタマイズできる」「共有できる」といった特徴を兼ね備えた商品に転換し始めていることを定量的な社会調査で明らかにした本だ。この本によれば、多くの社会不安を経たことで、従来の消費者とは異なる「希望」「信頼」「未来」にお金を払う人が増えてきている、という。この本は、震災前の米国で書かれているが、震災後の日本では非常に大きなリアリティを持って読むことができる。
インターネットが日常に根付いた情報環境の変化は、コンテンツ産業に大きな変化をもたらした。
クリエイターが既存の仕組みや資本に頼らず、自らプロモーションを行い、生み出した作品をリスナーや読者、視聴者などの消費者に届けるところまで構築できるようになった。
これは、クリエーターが多くのしがらみや、他者や資本への依存から解放されるということ。
そんな中、起こったのが東日本大震災。
震災以後、音楽に求められるものは明らかに変化した。
アーティストの中に、積極的にSNSを活用する者が現れた。
CDにパッケージするというプロセスを省略し、告知をSNS上でおこなうことで、アーティストが「今」抱えている感情を込めた作品を、リアルタイムでファンが共有するという現象が現れるようになってきた。
これはコンテンツ産業以外でも同様のことが言える。
東日本大震災は不幸な出来事だが、これが多くの人の価値観を変え、ビジネスの仕組みを変え、新しき方向性を模索する転機になるとすれば、この経験は無駄にはならないのではないだろうか。
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