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2013年7月 1日 (月)

わかりあえないことから/平田オリザ

Photo  いま、日本社会は、社会全体が、「異文化理解能力」と、日本型の「同調圧力」のダブルバインドにあっている。
 一つの小さな家庭の中でも、ダブルバインドが繰り返されれば、それが統合失調症や引きこもりの原因となる。だとすれば、社会全体がダブルバインドの状態にあるいまの日本で、ニートや引きこもりが増えるのは当然ではないか。いや、そのような個別具体の現象面だけではなく、日本社会全体が内向きになっているとされる理由も、おそらくはここにある。
 日本社会全体が、コミュニケーション能力に関するダブルバインドが原因で、内向きになり、引きこもってしまっている。

ダブルバインドとは、簡単に言えば二つの矛盾したコマンドが強制されている状態を言う。

たとえば、「我が社は、社員の自主性を重んじる」と常日頃言われ、あるいは、何かの案件について相談に行くと「そんなことも自分で判断できんのか! いちいち相談に来るな」と言われながら、いったん事故が起こると、「重要な案件は、なんでもきちんと上司に報告しろ。なんで相談しなかったんだ」と怒られる。

このような偏ったコミュニケーションが続く状態を、心理学用語でダブルバインドと呼ぶ。

現在、表向き、企業が新入社員に要求するコミュニケーション能力は、「異文化理解能力」である。

異なる文化、異なる価値観を持った人に対しても、きちんと自分の主張を伝えることができる。

文化的な背景の違う人の意見も、その背景を理解し、時間をかけて説得・納得し、妥協点を見いだすことができる。

そして、そのような能力を以て、グローバルな経済環境でも、存分に力を発揮できる。

非常に難易度の高い能力である。

しかし、実は、日本企業は現場での職務の中で、無意識にもう一つの能力を社員に要求する。

それは、いわゆる「空気を読む能力」である。

つまり「上司の意図を察して機敏に行動する」「会議の空気を読んで反対意見は言わない」「和を乱さない」といった日本社会における従来型のコミュニケーション能力だ。

しかも、何より始末に悪いのは、これを要求している側が、その矛盾に気がついていない点だ。

指摘されてみれば確かにそうで、ウツを訴える社員が年々増えているのも、このような背景があるのかもしれない

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