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2013年7月 6日 (土)

知っておきたい日本人のアイデンティティ/瓜生中

Photo  また、このようなムラ社会は年功序列型社会でもあった。抜きん出た働きがなくても、年齢に応じてそれなりの役職が与えられ、その役職は年とともに重みを増してくる。そして、子どもも成長して孫もでき、隠居しても氏子総代や檀家総代などの名誉ある役割が用意されていた。狭いムラ社会の中ではあるが、そこで暮らす人々の人生は決められたレールの上を走ってさえいれば、意外に満ち足りたものだったのではないだろうか。つまり、ムラは外に目を向けなければ、それなりに納得の行く人生を送ることのできる社会、いわば自己完結型社会とでもいうべきものだった。

日本人のアイデンティティを考える場合、いくつかのキーワードがある。

そして、その中の一つに「ムラ社会」がある。

日本は農村、山村、漁村を問わず、ムラには整然とした秩序があり、厳しい掟もあった。

そして、年齢や性別に応じた役割分担も厳格に定められていた。

人々はこの掟に従い、自分に課せられた役割を淡々とこなすことによって、大過なく過ごすことができた。

そして、そうした日々の暮らしの積み重ねによって人生を大過なく過ごすことができたのである。

ムラの暮らしは因習に縛られた窮屈なものだったが、それさえ我慢すれば、自分で人生設計をしなくても、生まれたときから人生の設計図が用意されていた。

はじめから決められたレールが敷かれた人生で、そのレールの上を走れば、そうそう脱線することもなかった。

仮に脱線してもムラの人々が助けてくれた。

つまりムラ社会とは、「人生丸投げのシステム」である。

だから、当時の日本人にとって最も怖かったのは「村八分」である。

村八分になると、自分の人生に責任を持ち、自分の力で人生を切り開いていかなければならなかった。

当時の日本人はこれを最も恐れた。

ムラ社会が生んだものの一つに年功序列のシステムがある。

年功序列は種々の問題はあるにせよ、多くの日本人にとって居心地の良いシステムだったのではないだろうか。

だから、企業もそのシステムを採用したのだろう。

しかし、近年のグローバリゼーションの波に押されて、この居心地の良いシステムも変革を迫られてきている。

年功序列のシステムを維持するためには、三つの要件がある。

第一に、企業の業績が右肩上がりに上がっていくということ。

第二に、高年齢者よりも若年者の方が多いということ。

第三に、企業は何十年も永続するということ。

今、これらの三つとも崩れようとしている。

もはや、年功序列を維持することは不可能である。

しかし、日本人が新たなシステムに馴染むには相当な時間を要するであろう。

なにしろ、年功序列には数百年の歴史があるのだから。

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