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2013年7月28日 (日)

人民は弱し、官吏は強し/星新一

Photo  星は最後にこう語り終えた。
「・・・・・・阿片事件の発端から結審まずの、このおびただしい犠牲の上に築かれたものに、何かあるでしょうか。そこには、ただ一つの教訓があるだけです。我々が持っている現在の文明には、まだ大きな欠陥があるという教訓が。このような取扱いをされても、政府にはなんの損害補償をも要求できないのですから、国民とはあわれな存在と言わなければならない」
 星はここで少しうつむき、ため息をついた。過去を回想し、現状を思い、さらに暗さをます未来をなげく感情を、押さえることができなかったのだ。十年前ごろには黒々としていた頭髪も、いまは真っ白になっていた。それから、かすれた声で言い加えた。
「人民は弱し、官吏は強し」

本書はショートショートの第一人者、星新一氏がその父親、星一を描いたもの。

明治、大正にかけて製薬会社を立ち上げた星。

日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展する。

しかし、星の自由な物の考え方は、官僚たちの反感を買う。

官僚のあらゆる嫌がらせを受けながら、星は最後まで屈服することなく腐敗した官僚と戦い続ける。

そして度重なる訴訟。

星は官僚、同業他社、マスコミ、すべてを敵に回して戦う。

最後には無罪を勝ち取ったものの、その訴訟費用は膨大なものとなり、会社の体力を奪っていく。

上記は、星が株主総会で語ったもの。

最後に言った「人民は弱し、官吏は強し」という言葉。

官僚と戦い続けた星の精一杯の言葉の抵抗だったのではないだろうか。

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