野村監督に教わったこと/山崎武司
キャンプ中のミーティングでも最初の1週間は野球の技術論は全くなくて、人間教育ばかりでした。その中で、僕の心にいちばん印象強く残っているのが、
《野球は生きるための手段。人生を生きることが大きな目標》
という言葉です。
言い方としては、
「野球を終わった後の人生のほうが長い。野球のことばかり考えていられる立場ではないぞ。今は野球でおまんま食わしてもらっているけど、野球以外のことも考えてやらなければ人生はうまくいかないぞ」
とか、
「引退後のことを考えれば、日ごろの振る舞いも、生活も含めたすべてが変わってくるだろう。それを踏まえて行動しろ」
とかいう表現になります。
時々元野球選手や元Jリーガーが事件を起こしたという記事が新聞に載る。
現役時代脚光を浴びていた人物が、今度は逆の意味で新聞を賑わしているのを見て、いやな気分になる。
野球選手の選手としての寿命は短い。
当然のことながら、選手時代よりも引退してからの人生の方が長い。
だとしたら、選手としての現役の時代、きちんと引退後の人生について考えるべきだろう。
野球選手は子供のときから野球しかしてきていない。
組織の中に入って揉まれてもいない。
野球界は実力の世界なので、力がある間は向かうところ敵なし、恐いものもなく、周りからはチヤホヤされる。
そのため、間違った方向に行きやすい。
人生は引退してからの方が長い。
そこで野村監督は、野球をやめてから間違った方向に行かないためにも、人間教育をするという。
このことを他の職業に当てはめると、次のキャリアのことを見据えながら、今目の前の仕事に全力で取り組むということではないだろうか。
特に変化の激しい今の時代は、今の仕事が永遠に存続すると言い切れないことが多い。
時代の変化とともに今のスキルが陳腐化してしまうということはよくあること。
その意味で、キャリアチェンジは、多くのビジネスマンにとって共通の課題ではないだろうか。
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