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2013年8月18日 (日)

大地の子(一)/山崎豊子

Photo  八月十五日、誰も日本が降伏したことを知らず、ソ連機と匪襲を怖れて、夜は火を焚かず、木の下で夜露を避けて、さらに野宿を重ねた。日に日に、満軍の銃声が近くなり、中国人集落からも発砲されるようになったが、日本の敗戦を知らない兵隊たちは殺気だち、避難民の列を足手まといにした。特に幼児の泣き声は、敵に察知される因だとし、「五歳以下の子供は殺せ!それが全滅から助かる唯一の道だ」と命令した。
 逃避行に疲れ果て、前途を悲観した若い母親たちは、自分の手で殺すのにしのびず、顔をそむけて、兵隊に幼児や赤ん坊を手渡した。子供たちは叢に俯せにされ、首を締められた。母は五歳のあつ子を六歳と偽り、絶えず、兵隊の眼につかぬよう庇った。

この小説では中国に戦争孤児として取り残された陸一心を中心にストーリーが展開さる。

第一巻では、その生い立ちと、労働改造所に送られてからの苦難の日々がつづられている。

山崎氏の著書は実在の人物がモデルになっていることが多いのだが、この小説の主人公は珍しく創作上の人物である。

ただ、かなり綿密な取材の上で書かれているので、その周辺で起こっている出来事は事実に基づいている。

上記記述は、敗戦が決まった8月15日の出来事。

中国に取り残された日本人がどのような目にあったのか、その悲惨さは言葉では語り尽くせない。

またこんな悲惨な出来事が起こるのが、戦争なのだろう。

追い込まれた人間がどうなってしまうのか、それは頭で考えてもわかるものではない。

人間の本性がむき出しになった世界がそこでは繰り広げられる。

合理性とは対局の世界がそこにはある。

小説とは基本的にフィクションなのだが、他の歴史書では語られなかった真実がその中にある。

その意味では、たまには小説を読むことも大事なことではないだろうか。

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