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2013年8月24日 (土)

ファスト&スロー(上)/ダニエル・カーネマン

Photo 心理学では、魔法のように見える直感も魔法とは見なさない。この点に関する最高の名言は、おそらくあの偉大なハーバート・サイモンによるものだろう。サイモンはチェスの名手を調査し、彼らが盤上の駒を素人とはちがう目で見られるようになるのは数千時間におよぶ鍛錬の賜物であることを示した。サイモンは次のように書いたが、この一文からも、専門家の直感を神秘化する傾向にむかっ腹を立てていたことがうかがえる。
「状況が手がかりを与える。この手がかりをもとに、専門家は記憶に蓄積されていた情報を呼び出す。そして情報が答を与えてくれるのだ。直感とは、認識以上でもなければ以下でもない。」

本書のタイトル、ファスト&スローとは、人間の持つ、速い思考と遅い思考のこと。

速い思考を行うのがシステム1、遅い思考がシステム2とし、そのシステムの解明と相互作用に紙面の大半を割いている。

そして、最近の研究成果によれば、経験から学んだことよりも直感的なシステム1のほうが影響力は強いとのこと。

つまり多くの選択や判断の背後にあるのは、システム1だということである。

何か問題に直面したとき、たとえばチェスで次の一手をどうするかとか、どの株を買うかといったことを決めるとき、直感的思考というマシンは自分にできる最善のことをする。

しかるべき専門知識を持ち合わせているなら、状況を認識したうえで頭に浮かぶ直感的な解決策はおおむね正しい。

複雑な局面を目にしたチェスの名人に起きるのは、まさにこれである。

彼が思いつく選択肢は、どれも十分な根拠がある。

ただし、この速い思考は間違いも侵しやすい。

ハロー効果などはその代表例。

ハローとは後光のことで、初対面の印象や、最初に起こった現象、言葉、そういったものに思考が引きずられてしまい、間違った判断を下してしまうというもの。

だから、直感を過信するのも、それはそれで問題がある。

自分が直感で判断したものを、後から検証するために遅い思考は働く。

また、より困難な問題に直面したとき、私たちはより時間をかけて頭を使う熟慮熟考へとスイッチを切り替える。

これが「遅い思考」である。

通常、私達はこの速い思考と遅い思考を無意識の内に切り替えながら生活している。

このことを本書では科学的に究明しているわけだが、自分が普段どのような思考に引きずられているのか、それを知るには非常におもしろい本である。

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