理性の限界/高橋昌一郎
会社員 私事で恐縮なのですが、実は私も、近い将来、ある女性と結婚しようと考えておりまして……。ところが、本当にそれでよいのか、もっと別の生き方があるのではないかなどと考えて、なかなか決断できずにいるのです。このような問題にも、理性的な解決がありうるのでしょうか?
哲学史家 それは人生の岐路における大選択ですな。
近代論理学の基礎を構築した哲学者ライプニッツは、あらゆる問題を理性的に解決できると信じていました。いかに複雑な問題であっても、論理的に緻密に解きほぐして計算すれば、明確に答えを得ることができると……。そこで彼は、自分が結婚に迷ったときも、理性的に解決しようとしました。
会社員 それは、いったい、どのようにして?
哲学史家 結婚した場合に想定されるあらゆる可能性を、紙に書き出したわけです。プラスとマイナスを箇条書きにしてね。(中略)
会社員 それで、どうなったのですか?
哲学史家 もちろん、ライプニッツは、結婚をとりやめましたよ。理性的に計算すれば、そうなるに決まっているじゃないですか!
私たち人間は、何を、どこまで、どのようにして知ることができるのか?
いつか将来、あらゆる問題を理性的に解決できる日が来るのか?
あるいは、人間の理性には、永遠に超えられない限界があるのか?
本書ではこの問題について、会社員、経済学者、哲学史家、運動選手、生理学者、科学社会学者等、様々な立場の人物がディスカッションする形で進められている。
当然、結論は出ないのだが、たまにはこのような「永遠のテーマ」について様々な角度から考えるのもよいのではないだろうか。
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