本当のブランド理念について語ろう/ジム・ステンゲル
企業やブランドがコミュニケーションに成功するか失敗するかという問題を考えるとき、私はロシアの文豪トルストイの言葉を思い出す。小説『アンナ・カレーニナ』の冒頭の一節だ。
「幸福な家庭はすべて似たように幸せだが、不幸な家庭はすべて異なる形で不幸せである。」
きわめて急速に成長し続け、きわめて高い利益率を記録し、きわめて活発にイノベーションをおこなっている企業やブランドには、ある共通点がある。それは、質の高いコミュニケーションを実践していることだ。あらゆる要素がブランド理念を表現し、それを後押ししているのである。
商品のコモディティー化が進む中、企業にとっての大きな課題は、いかにして、ブランド価値を高めるか、ということである。
ブランドがあれば、価格競争に巻き込まれるのを免れることができる。
そうすれば利益を増やすことができる。
利益が増えれば、それを次の投資に回すことができ、よい循環が生まれる。
多くの企業がそのようになることを願っている。
しかし、ブランド価値を高めるのであれば何でもよいというわけではない。
やはりそこには振れてはならないものがある。
それは「 人々の生活をよりよいものにする」ことを目指すブランド理念をもつこと。
これは、社員に始まり顧客にいたるまで、その企業やブランドが関わるすべての人々を末永く味方につけ、連帯させ、行動の背中を押し続ける唯一の手段である。
また、社内の人々がいだく中核的信念とその企業やブランドが奉仕する人々が重んじる基本的価値を結びつける要素でもある。
その結びつきがなければ、言い換えればブランド理念がなければ、どのようなビジネスも本当の意味で抜きんでた存在にはなれない。
それは成長し続けている企業に共通していえること。
とかく方法論に陥りがちだが、それよりも大切なものは理念であるということを本書は教えてくれる。
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