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2013年9月 7日 (土)

日本はなぜ開戦に踏み切ったか/森山優

Photo 要するに、陸軍にとって、対米戦は海軍がやってくれる戦争だった。東条が対米戦を主張できたのも、他所の仕事という認識だったからである。しかし、海軍は対米戦に自信がないと公式に言うことは出来なかった。対米戦を名目に多くの予算と物資を獲得してきた経緯に加え、九月の御前会議では外交交渉が成立しなければ開戦に踏み切ることをも明言していたからである。戦争が不可能と言えば、海軍の存在意義が失われる。
 つまり、陸軍も海軍と同じように、自分以外の組織の犠牲によって問題を解決しようとしたのである。もし陸軍が対米戦を自らの戦争と自覚して中国で失う利害と同じ地平で考えることができたなら、撤兵という苦渋の選択を行ない得たであろう。そして海軍が大陸の利害と陸軍との関係を自らの対米戦と同レベルの問題として捉えることができたなら、その主張に説得力が増したに違いない。しかし、現実には、両者ともに自らの利害に立てこもる姿勢をとった。
 

日本はなぜあの時、無謀な対米戦に踏み切ったのか?

多くの日本人の理解は、「軍部の暴走」であろう。

「軍部」は、日本を悲惨な戦争に引き込んだ「悪」として表象されてきた。

最終的にハル・ノートにより、中国とインドシナからの日本軍と警察の撤収を突きつけられ、日本は海戦に踏み切ったのだ、と。

でも、戦争の結果を知っている今の私たちの立場から 見れば、中国からの撤兵問題でアメリカと折り合いがつかなければアメリカに戦争を仕掛けるなど、愚の骨頂でしかない。

確かに、日本は日中戦争に多額の予算を投入し、日露戦争を超える戦死者も出していた。

手ぶらで帰る訳にいかないと思うのは人情である。

しかし、アメリカと戦って敗れれば、中国大陸の利権を失うなどというレベルでは済まない。

起こりうるリスクと利害得失を天秤にかければ、対米戦という結論が出るはずはない。

ところが、最大の問題は、日米戦と中国からの撤兵を天秤にかけて判断する政治的主体が、日本のどこにもなかったことである。

結局、組織的利害を国家的利害に優先させ、国家的な立場から利害得失を計算することができない体制が、対米戦という危険な選択肢を浮上させたと言えるのではないだろうか。

でも、当時の意思決定のシステムは単なる昔話で片づけられるのだろうか。

今もその体質は引き継がれているような気がするのだが。

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