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2013年9月19日 (木)

黒の回廊/松本清張

Photo_2 それだけではない。女性一行の間には、こんどの事件がまたとない経験のように思われ出した。殺人事件のある観光団などというものが、そう滅多にあるものではない。その団体に参加していたというだけで自分自身にとって将来の語り草にもなるのである。だれもが今後この観光団の旅をつづけてもわが身に同じ災難がふりかかってくるとは思わなかった。自分だけは安全であり、災厄の局外者であり、傍観者だと信じて疑わなかった。してみれば、平凡な団体旅行をしているよりも、このほうがはるかにミステリアスであり、刺戟的であった。未解決の殺人事件ほど神秘的で戦慄的で、また或る意味で耽美的なものがあろうか。なかには『悪の華』を書いたボードレエルの「一行の詩」(芥川龍之介の遺作)を感覚的に連想した文学女性も、少数だがあったにちがいない。
 とにかく、彼女らはこれに参加していることに俄かに価値感をおぼえ、意義を重要に考えるようになった。生涯に一度あるかないかの経験をのがすてはなかった。返金の要求者も脱落の希望者も、次第に声を絶ってしまった。

 

女性だけの25日間ヨーロッパツアー旅行が企画される。

女性だけというのがミソで、出発するや、女同士の牽制や見栄の張り合い・嫉妬が交錯し、さまざまなトラブルが発生する。

警察沙汰も発生する。

そして、ついに、スコットランドで殺人事件が起こる。

面白いのは、このときの女性たちの反応である。

かえって旅行から戻った時の話のタネになるとみんな喜んだということと、

自分だけは大丈夫だろうとみんな思ったということ。

それぞれ自分のことしか考えていないということか。

もしかしたら、これが著者の女性観なのかもしれない。

ストーリー自体は謎解きものなのだが、違った面でこの小説の面白さを感じた。

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