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2013年9月 9日 (月)

危機の指導者 チャーチル/冨田浩司

Photo エド・マローは、大戦中アメリカCBS放送のロンドン特派員として活躍した著名なジャーナリストである。「こちらロンドン」で始まり、「おやすみなさい。そして幸運を(Good Night,and Good Luck)で終わる彼のラジオ放送は、欧州の戦局を米国の家庭に生々しく伝えた。
 そのマローは、チャーチルの戦争への貢献を評して、「(彼は)英語を動員して、戦場に送り出した」と述べたが、彼が戦時中に行った幾多の演説が人々の記憶に残る最も印象深い貢献であったことは間違いない。

政治には、平時における政治と危機におけるそれとの二つがある。

平時の指導者に求められる最も重要な資質は、資源配分の技術である。

この面におけるチャーチルの技量は、上の下か、中の上といったところであろうか。

しかし、危機の政治においては、彼は疑いなく超一級品であった。

何よりも、チャーチルにとって危機において国家を指導することは、常に人生の目的であり、運命であるとすら考えていた。

一定の年齢以上の英国人にとって、チャーチルの演説は戦時の記憶と共に特別の意味を持っている。

チャーチルの原稿の準備に費やす時間と手間は尋常なものではなかった、という。

彼自身、このプロセスについて、

「私は、さっさと作文をしたりしない。文章のスタイルと構文には最大限の手間をかける。私は、文章が光り出すまで磨きをかける」と述べている。

原稿の用意ができると、それを徹底的に暗記し、何回もリハーサルを行う。

演説の直前には四六時中予行演習を行っていたらしい。

しかし、数々の演説があれほどまでに国民の共感を生んだ理由を単なる演説技術の問題に帰することは適当ではない。

内容面で二つの特徴がある。

第一は、目的意識の明確さである。

チャーチルの演説は、何故闘うのか、そして正義はどちらの側にあるのかを疑問の余地なく明示する。

第二は、チャーチルの演説が生み出す歴史的共感である。

彼の演説を聞くとき、国民は自らが歴史の一部となったことを自覚せざるを得ない。

演説の中に、歴史上のエピソードや偉人の言葉が絶妙に散りばめられていた。

昨日、2020年オリンピックの東京開催が決まった。

直前に行われた日本のプレゼンを見て、やはり言葉の力は大きい、と感じた。

これも決めての一つとなったのだろう。

言葉を大切にしていきたい。

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