会社の老化は止められない/細谷功
人間と同様、会社は生まれた瞬間から老化が始まる。さらにいえば、会社の営みを一言で表現すれば、「老化との戦い」ということもできるだろう。それは会社という生命体が持っている「不可逆性」、つまり変化は一方通向で後戻りができないという性質による。例えば「ルールや規則は増える一方」「顧客意識は薄まる一方」「目的意識の希薄化は進行する一方」というように、会社の老化は一方通行の不可逆プロセスとして進行していく。
仕事の関係で、様々な企業を訪問する。
中には、創業からかなりの年数を経ている企業もある。
そのとき感じることは、本書で述べるところの「老化現象」がいたるところに現れているということ。
たとえば、目的意識が希薄になった結果、「手段の目的化」が起こっている。
手段は目的より具体的で目に見えやすい。
本来、会社全体が目指していることを実現するための手段であった「組織」が、いつの間にか自己目的化して、みずからの組織を最適化するためだけに動き始める。
一部の問題社員を規制するために作られた規則やルールが目的化して、大多数の「善良な社員」の足かせになってしまう。
クリエイティブワークが失われ、ルーチンワークが幅を利かしていく。
クリエイティブワークを「攻め」とするならば、ルーチンワークは「守り」である。
いずれも企業にとっては大事な仕事であることは間違いないが、企業にとっての生命線となり、他社と差別化するための付加価値を生み出しているのは圧倒的にクリエイティブワークであることは間違いない。
ところが「手段が目的化」し、見えやすいものに流れるという思考停止の状態は、クリエイティブな仕事の割合を減らす方向に一方通行で流れていく。
その結果、クリエイティブな仕事の割合を減らす方向に一方通行で流れていく。
予算・ノルマの達成、社内での評価といった目に見える「金と数字」のみが重要になる。
イノベーターは活躍の場がなくなるばかりか会社の老化が進行するとともに閉塞感を覚えるようになる。
この状態を放置すると、イノベーターは会社を去り、ルーチンワーク型人材のみが残る。
ますます会社の老化が進化していく。
こんな企業が生まれてくる。
いや、大部分がそうなのではないだろうか。
このような負のスパイラルを脱することが多くの企業に求められていくのではないだろうか。
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