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2013年9月23日 (月)

ビジネスの〝常識〟を疑え!/遠藤功

Photo トヨタは昔から、部長の下にひとつのユニットとして課長、係長、担当者を置き、課長が係長を次の課長に、係長が担当者を次の係長に、という具合にそれぞれ自らが責任をもって育て上げるというのが不文律になっていた。
 ところが、ここにきて海外展開が加速化し、人材を海外に送り出す必要性が増したため、階層の中抜けが起こりはじめている。課長―係長―担当者という縦系列が維持できなくなり、過去のようなきめ細かい人づくりができなくなりつつあるといわれている。こうしたことが近い将来、現場の品質の劣化につながるのではないかと危惧されているのだ。
 トヨタの場合、意図的にフラット化しようとしたわけではないのだが、人材不足が結果的に一部の組織の階層を間引いてしまったというわけだ。

本書は2007年に刊行されたのだが、まさにこれから2年後、米国における大規模リコール、トヨタバッシングが起こる。

この時、豊田社長は、リコールの原因として「人材育成が、経営拡大のスピードについていけなかった」ことを挙げた。

本書に書いてあることがそのまま起こってしまったのである。

ピラミッド型の階層的組織は、情報伝達や意思決定に時間がかかりすぎる。

迅速で柔軟な企業運営には、できるだけ階層の少ない文鎮型のフラットな組織のほうが望ましい。

これが、現在の組織論における一般的な常識だろう。

たしかに組織がフラットになれば、経営トップと現場の間にバイアスがかからず情報のやり取りができ、意思決定はスピードアップする。

企業が以前に比べ格段に変化の激しい環境に置かれていることを考えれば、すばやい意思決定、すばやい伝達ができることが経営にとって有利に働くのは間違いない。

では、フラット化はいいことずくめなのかといえば、必ずしもそんなことはない。

フラットな組織ゆえの弊害だってあるのだ。

まず、組織の縦系列が弱いフラットな組織では、部下の面倒をみながら人を育てるということがきわめて難しくなる。

それから、階層的組織に比べひとりの人、ひとつの部署が管理する範囲が広がるので、隅々まで目がゆき届きにくくなって不祥事が発生したりしやすい。

これらの長所と短所を考え合わせると、少なくとも技能やノウハウの伝承、それに人を育てることが重要なモノづくりの現場には、従来の階層型組織のほうが向いているといえる。

少なくとも、階層的組織よりフラットな組織のほうが優れているという一方的な思い込みは危険である。

重要なのは、一般に常識と思われている考え方を鵜呑みにせず、時には否定してみることである。

常識と思われていることをあえて疑ってみる。

そして最後は自分の頭で考え抜く。

これに尽きるのではないだろうか。

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