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2013年9月27日 (金)

震度0/横山秀夫

Imagecayr168x まさか。
 静江が不破を殺した••••••?
 部屋の空気が極度に張り詰めた。
 「見えないこともない、です」
 冬木は言った。そして身構えた。
 全員の視線がこちらに向いていた。
 あまりに多くの感情を含んでいて、そのすべてを読み取ることは難しかった。
 瞬時、冬木は長官になった自分の姿を見た。
 「記者たちには連絡済みです。不破課長は今朝、風邪を拗らせて急性心不全で死亡した――もはやこれは動きません」
 誰も何も言わなかった。
 音を消したテレビ画面に神戸の惨状が映し出されていた。
 震度——0。
 N県警の本部長室はそうだった。

この小説の登場人物はすべてN県警の幹部である。

本部長、警務部長、警備部長、刑事部長、生活安全部長、交通部長。

そして、それぞれが自分の出世や定年後の天下り先の確保など、自分の保身しか考えていない。

それが部下の失踪と阪神大震災という事件・事故を通して浮き彫りになるようなストーリーである。

阪神大震災が起きたその朝、700キロ離れたN県警で不破警務課長が失踪する。

本部長以下幹部らはそれぞれに手がかりとなりそうな情報を調べるが、保身や対抗意識から駆け引きや情報戦の応酬に陥ってしまう。

そして、これと同時進行する形で、阪神大震災の全容が徐々に明らかになっていく。

テレビから流れてくる死者・行方不明者数の報道は、数十人から数百人、数千人と日を追うごとにどんどん膨れ上がっていく。

一方、失踪事件の方は、捜査が進むにつれ、不破課長の妻が殺したのでは、という疑惑が浮かび上がる。

この事実が世間に公表されたらN県警の信頼は失墜する。

幹部らは事実のもみ消しに躍起になる。

阪神大震災の方は、結局、震度7という未曾有の大震災だったことがわかってくる。

ところが、N県警の幹部連中は、大震災どころではない。

だからN県警内は震度0なんだと。

この落差、なんとも皮肉なタイトルである。

この小説を読んでいて、井上陽水の「傘がない」のあるフレーズが思い浮かんだ。

〝都会では自殺する若者が増えている。けれども問題は今日の雨、傘がない~〟

自分にとって問題なのは目の前の困った現実なのであって、世間の問題など、ハッキリ言って関係ないのだ、といった意味だろうか。

普通に生活する一個人であればそれでもよいが、警察幹部がこれと同じ感覚だと大問題だと思うのだが。

でもこれが現実なのかもしれない。

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