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2013年10月 9日 (水)

「空気」の研究/山本七平

Photo  「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。何しろ、専門家ぞろいの海軍の首脳に、「作戦として形をなさない」ことが「明白な事実」であることを、強行させ、後になると、その最高責任者が、なぜそれを行なったかを一言も説明できないような状態に落し込んでしまうのだから、スプーンが曲がるの比ではない。こうなると、統計も資料も分析も、またそれに類する科学的手段や論理的論証も、一切は無駄であって、そういうものをいかに精緻に組みたてておいても、いざというときは、それらが一切消しとんで、すべてが「空気」に決定されることになるかも知れぬ。とすると、われわれはまず、何よりも先に、この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起るやら、皆目見当がつかないことになる。

日本人は「空気」という言葉をやたらに使う。

「あの場の空気ではそうせざるを得なかった」・・・と。

本書は、そのことに問題意識を持って記述された初めての本であろう。

戦艦大和はなぜ、無謀な出撃をしたのか?

このことの理由として「全般の空気よりして、当時も今日も(大和の)特攻出撃は当然と思う」(軍令部次長・小沢治三郎中将)という発言がでてくる。

何の論理的説明もないのである。

にも関わらず、「空気」という言葉が出てくると、みんな納得してしまうのである。

出撃を当然とする主張にデータ的根拠は全くなく、その正当性の根拠は専ら「空気」なのである。

あらゆる議論は最後には「空気」できめられる。

最終的決定を下し、「そうせざるを得なくしている」力をもっているのは一に「空気」であって、それ以外にない。

これは非常に興味深い事実である。

日本人すべてを、あらゆる議論や主張を超えて拘束している「何か」がある。

その「何か」は、大問題から日常の問題、あるいは不意に当面した突発事故への対処に至るまで、私たちを支配する。

その周囲にいた人びとをも規制し、一定のパターンの行動をとらせる。

それが、おそらく「空気」である。

本書が刊行されたのは1977年のこと。

しかし、36年経った今も、日本人の思考・行動パターンは全く変わっていないということがわかる。

このことにむしろ驚きを禁じ得ない。

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